米国に激震「カーク氏射殺」 死で増した影響力が招く政情不安…「内戦さながらの衝突」「左派弾圧」よりも懸念すべき動きとは

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保守とリベラルの対立が激化

 西部ユタ州の大学で9月10日に若手保守活動家のチャールズ・カーク氏が射殺されてから、米国社会は大きく揺れている。

「銃を乱射する人物がいる」などの偽情報が流れ、学校などが閉鎖に追い込まれる事態が全米で相次いでおり、国民は治安の悪化を危惧している。

 米国の政治的分断もより深刻になった。SNS上では保守派、リベラル派の双方が「内戦を起こすために相手方が事件を企てた」との主張を展開している。米国では近年、保守派とリベラル派がお互いを侮蔑し合う言動が日常的なものになった。

 歴代の大統領は、テロ事件などが起きると国民に融和と団結を求めた。だが、トランプ大統領は12日、「過激な左派が問題だ。彼らは悪質で恐ろしい」と分断に拍車をかける発言をした。バンス副大統領も15日、「許されない暴力を助長し、関与する非政府組織(NGO)ネットワークを追及する)と左派勢力を断罪した。

 共和党陣営は組織的な「魔女狩り」を開始している。

 英紙ガーディアンは13日、SNSでカーク氏の銃撃事件を蔑視・嘲笑した人々が相次いで解雇されていることを報じた。解雇の対象は、教師や公務員、消防士、さらには、大統領警護隊(シークレットサービス)の職員にまで及んでいる。

カーク氏の威光が高まり「左派弾圧」も?

 気がかりなのは、暗殺されたカーク氏の威光が高まっていることだ。

 CNNによれば、カーク氏が開設したネット上の各種アカウントはほとんど更新されていないにもかかわらず、事件から3日間で数百万人の新規フォロワーを獲得した。

 カーク氏の妻のエリカ氏が「夫の声はこれまで以上に鮮明に響きわたり、彼の知恵は永遠に生き続けるだろう」と述べたように、カーク氏の影響力が生前よりも大きくなることで米国の政情がさらに不安定化するリスクが頭をもたげている。

 カーク氏は米国で社会主義が浸透していることに警戒感を抱いていた。

 米調査企業ギャラップの最新調査によれば、「資本主義を好意的に捉えている」との回答は54%にとどまり、調査が始まった2010年以降で最も低い水準となった。社会主義への好意的な見方は全体で30%とほぼ横ばいだが、民主党支持者では66%に上り、2010年の50%から大きく増加している。

 資本主義を擁護する共和党が「カーク氏の遺志だ」として、民主党内の左派勢力を弾圧する動きに出るのではないかとの不安が頭をよぎる。

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