巨人3位転落…残り試合のカギを握るのは主砲・岡本の一発だ 大勢、マルティネスの温存は“宝の持ち腐れ”【柴田勲のコラム】

  • ブックマーク

赤星優志の12球降板に驚いた

 巨人が2位から3位に転落した。14、15日、DeNAとの直接対決(横浜スタジアム)に連敗し、1ゲーム差となった。

 8月2日以来、44日ぶりの3位だ。残り試合は11、苦しくなってきた。

 13日の阪神戦(東京ドーム)で阪神に総力戦を挑んで、9回に代打・坂本勇人のサヨナラ打で阪神とのレギュラー最終戦を制した。前のカードの広島3連戦も勝ち越している。さあ、勢いに乗って横浜に乗り込んだものの返り討ちにあった。

 しかもこの2連戦、力負けだった。反対にDeNAはそれまでの巨人戦の対戦成績が悪かったが(2連戦前まで6勝14敗1分)、「巨人恐怖症」を吹き飛ばして勢いづく結果になった。

 14日の赤星優志、どうしちゃったのかな、約3週間ぶりにマウンドに立ったのにわずか12球、無死満塁として降板、しかも肩痛がその理由だという。

 こんなのは聞いたことがない。なぜ言わなかったのか。担当コーチは気付かなかったのか。分からない。

連日にわたって崩れた救援陣

 それでも急きょ登板した平内龍太が1点に抑えて、打線が2回に4点を奪って逆転した。ここまでは良かった。でも4回に佐野恵太、石上泰輝に適時打を浴びて、石川達也を送り込んだが、悪い流れを止めることができなかった。

 林琢真に同点打、満塁から蝦名達夫にストレートの押し出し四球、2死満塁で登板したカイル・ケラーも筒香嘉智に2点適時打を許した。6失点だ。

 13日の阪神戦も3点リードの5回に中継ぎ陣が7失点していた。ケラーは4四球を出していた。

 救援陣が連日にわたって崩れた。9回、2点を追って1死一、三塁で一塁の代走・増田大輝がけん制死だ。なんでこんなところで……一番やってはいけないミスだ。あれで終わった。

田中将の安定感に期待

 翌日の田中将大はまさに「産みの苦しみ」だね。200勝が通過点の投手はすんなりいくのだが、田中将は違った。堀内(恒夫)もそうだった。(※)

 アンソニー・ケイが良かった。田中将にはちょっと気の毒だった。球は速いしスライダーも切れていた。巨人打線、見ていて打てる気がしなかった。ヒットはポツリポツリと出たが、長打は期待できなかった。

 田中将もよく投げたけど真っすぐに力がない。特にDeNAの若い打者は良い時を知らないから、物おじせずに思い切り振ってくる。石上がそうだった。

 バックもよく盛り立てている。21日の中日戦(バンテリンドーム ナゴヤ)に中5日で先発するそうだが、これは安定感を買われてのものだろう。頑張ってもらいたい。

突破口を開くのは主砲・岡本の一発

 さあ残り11試合。やはり求められるのは岡本和真の本塁打だ。主砲の一発はチームの雰囲気を変える力がある。

 8月23日のDeNA戦で10、11号と連発して以来打っていない。19試合ご無沙汰だ。

 ヒットは確かに出ている。おそらく相手は、「ヒットを打たれるのは仕方ないが本塁打だけは避けろ。嫌なら歩かせろ」、という指令を出しているに違いない。岡本にしても打てる球をフルスイングしていない。打球が上がっていかない。

 中山礼都が頑張っているがもろい。トレイ・キャベッジも同じだ。砂川リチャードが10本塁打しているが打率は2割1分6厘、安定していない。チャンスにもそう強くない。

 巨人の試合が重苦しい展開になるのは主砲の一発がないからだ。突破口を開くのは岡本だ。

大勢とマルティネスの温存は「宝の持ち腐れ」

 投手陣にしても、救援陣がここにきて崩れ始めた。残り試合を考えれば大勢、ライデル・マルティネスの起用方法ももっと柔軟に考えてもいいではないか。

 例えば1~2点差で競っている試合に大勢には3~4回投げてもらう。いまは1回を目いっぱい投げているが、先発するつもりで6~7分の力で投げてこい、でいい。

 マルティネスもセーブがつく場面での起用に限定しているようだが、2イニングいってもいいではないか。

 ケラー、船迫大雅、田中瑛斗らはこれまで連投してきている。彼らが崩れ始めたいま、なんとか手を打っていく必要がある。

「勝利の方程式」になかなかもっていけない今、大勢とマルティネスを温存しておくのは「宝の持ち腐れ」だ。

DeNAを迎え討つためにも2位浮上は必須

 巨人が阪神への挑戦権を手にするためには2位になり、本拠地の東京ドームでDeNAを迎え討つことが必須だと思う。

 3位になってハマスタに乗り込むとなると、いまの雰囲気からはDeNAの意識の方が上だ。底力も上だし、選手たちのメンタルも違う。第一、昨年のことがある。

 巨人は残り11試合を一戦一戦大事に戦って白星を重ねてもらいたい。絶対2位死守、大いに注目し期待している。

※1980年6月2日、後楽園球場でのヤクルト戦で達成。5月8日、中日戦で199勝を挙げてから三度目の正直だった

(成績などは16日現在)

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。