「総額1000万円」かかることも⁉ 韓国で“身長ビジネス”が大流行しているワケ

国際 韓国・北朝鮮

  • ブックマーク

 わが子を思う親の気持ちは万国共通とはいえ、心配事の中身は国それぞれ。お隣の韓国では子供の「身長」に気をもむ親が増え、政府が動く事態にまで発展しているというのだ。現地から聞こえてきた実情とは。

 ***

成長ホルモン注射が流行

 8月26日、米ドジャースタジアムにBTSのテテことV(29)が訪れ大谷翔平(31)と並ぶと、客席からは黄色い声が上がった。日韓スターの共演は大きな話題になり、中でも身長179センチのテテが大リーガーの大谷と並んでも見劣りしないと、両者の体格にも注目が集まったのだ。

 そんな世界で活躍するアイドルのようになってほしい……と願ってのことかは定かでないが、韓国では現在、子供の身長を伸ばしたい親たちの間で成長ホルモン注射が流行しているという。在韓記者が語る。

「歯や視力の矯正と並んで、最近では“プレミアム子育てパッケージ”の一つだなんていわれています。成長ホルモン注射は本来、平均より著しく背が低い低身長症と診断された子供などに処方されるはずのものです。ところが政府機関が注射を子供に使った保護者1000人を対象に調査したところ、その約6割が治療ではなく単に身長を伸ばす目的で使ったと答えました」

 ひいてはその多くが保険適用外であり、かかる費用は決してお安くない。実際に甥が成長ホルモン注射を使用している、さる韓国人女性はため息交じりに言う。

「1カ月で国産の注射なら30万~50万ウォン(約3万~5万円)、外国産なら70万~100万ウォン(約7万~10万円)が相場です。成長期に将来どれくらい身長が伸びるか検査し、低いようなら注射を始めます。成長期が終わるまで何年も打ち続けるため、体重によりますが総費用は5000万~1億ウォン(約500万~1000万円)にもなるとか」

“身長ビジネス”が過熱する理由

 注射は1日1回、皮下脂肪のある腕や腹に打つ。病院で打ち方を習った母親が行う場合が多く、その作業の負担に家族で頭を悩ませているという。

「2人兄弟の甥たちは、保険適用になるほど背が低くない。それでもそのまま成長したら170センチに満たないと言われ、成長ホルモン注射を決めました。ただ費用面なども考えて、まだ小学生でより効果が期待できそうな下の子だけにしたと兄夫婦は言います」(前出の韓国人女性)

 こういった家庭は少なくないようで、2021年に13万件だった注射の処方件数は24年には26万件に倍増。「身長が伸びる」とうたう健康食品やサプリも人気で、今年2月、政府機関は誇大広告としてこういった広告200件以上を摘発したと発表した。かくも“身長ビジネス”が過熱する理由について、韓国事情に詳しいコラムニストの児玉愛子氏が解説する。

「韓国には日本より露骨に高い身長を尊ぶ風潮があります。恋愛でも男女共に身長が高い人は人気で、その裏返しとして身長が低いことに強いコンプレックスを抱きがち。過去にテレビで『180センチ以下の男性は負け組だ』と発言した女性が大バッシングを受けたこともあるように、身長の話題にはみんな敏感です」

 また美容大国の韓国では、整形が一般的であることも理由の一つだという。

「今は気軽に顔に手が加えられる分、変えるのが難しい身長に目が向けられている面があると思います。ルッキズム(外見重視主義)は良くないと最近ではいわれていますが、見た目にシビアな韓国の文化はそう変わらない。ルックスで子供に苦労してほしくないと手を打ちたくなるのも、親心ではないでしょうか」(同)

 高身長の美男美女ばかりというのも、それはそれで違和感を覚えますけど。

週刊新潮 2025年9月11日号掲載

ワイド特集「生きる言葉」より

あなたの情報がスクープに!

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。