「今日は負けだ…」 試合途中で帰ったファンが残念がった、まさかの「優勝決定試合」

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内野安打とエラーによる逆転サヨナラ

 まさかのエラーで逆転サヨナラVが転がり込んできたのが、2007年の巨人だ。

 中日と阪神との三つ巴の激戦から頭ひとつ抜け出し、マジック「1」とした巨人は10月2日に5年ぶりの優勝をかけ、ヤクルト戦に臨んだ。

 だが、先発・内海哲也が3回にラミレスに先制3ランを浴び、1対3となった4回には、李承燁の2ランで追いついたのもつかの間、5回にエラーで再び勝ち越しを許してしまう。

 そして、3対4で迎えた9回、先頭の小笠原道大が死球で出塁したが、代走・鈴木尚広が痛恨のけん制死。悪い流れになりかけた。

 だが、ここから四球、犠打、敬遠で1死一、二塁となった後、代打・矢野謙次が投手のグラブをはじき、執念のヘッドスライディングで満塁としチャンスを広げた。

 次打者・清水隆行も「全力で走ればヒットになる」と、チームバッティングで花田真人の外角スライダーを叩きつけ、二塁前に緩いゴロを転がした。

 ショート・宮本慎也が回り込んで処理し、一塁に送球。アウトになればそのままゲームセットだったが、清水のヘッドスライディングが早く、名手・宮本の送球も高くそれてしまった。

 ボールがファウルグラウンドを転がる間に、三塁走者の李に続いて二塁走者の阿部慎之助もユニホームをボロボロに破りながら頭から生還した。内野安打とエラーによる逆転サヨナラという珍しいV決定シーンとなった。

 3つのヘッドスライディングでVを呼び込んだナインの執念に、原辰徳監督も「今年の巨人の野球を象徴していた。最後まで粘り強くという今年の戦い方が出た」と賛辞を惜しまなかった。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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