「半導体覇権」は新たな戦局へ 日本の技術的成功はトランプ政権下で通用するのか…変革期の業界を読む
米中関係が決める業界の未来
最終的に、半導体業界の行方を決めるのは米中関係だと私は分析しています。アメリカが対中国の戦略において、先端半導体技術の開発を封じ込めようと思えば、そのためには日本や台湾の半導体産業を「守らなきゃいけない」という思惑は強まります。
しかし、中国が十分な半導体の技術力を身につけてしまえば、相対的に日本や台湾の発言力は下がってしまうでしょう。
興味深いのは、バイデン政権の「囲い込み戦略」が、かえって中国のイノベーションを刺激したかもしれないということです。
「アメリカ企業から半導体を買えないのなら、自分たちで作るしかない」という風に、中国国内のイノベーションをむしろ喚起してしまった可能性があります。
トランプ政権の場合は「相手が中国でも条件をつけて売る」という方向に向かう可能性があり、実はその方が「自分たちで作れないものを無理して作るより、アメリカから買っちゃった方が早い」と中国が判断し、先端半導体の開発を諦める可能性もあるのでは、というのが私の読みです。
物づくりの系譜と日本の可能性
世界の物づくりの主戦場は、20世紀はアメリカが中心でした。それが日本に移って、韓国に移って、台湾に移って、という風にその地域が移転していることが分かります。この流れを考えれば、今は台湾に優位性があることも自然な流れに感じます。
しかし、重要なのは技術と経験の「蓄積」です。野球をするのに、説明書を読んで道具さえ揃えればできるかと言えば、すぐにはできないですよね。上達には教科書には載っていないいろいろなシチュエーションを実際に経験し、練習を重ねてノウハウを身に付けなければなりません。半導体で言えば、アメリカは教科書も道具も持っているが、経験がありません。台湾の強みはその経験の蓄積にあります。
日本の半導体復活にとって重要なのは、技術一点突破ではなく、総合的な事業戦略です。物作りというのは、単に物を作るだけではなく、作った物をいかにうまく売っていくかということをセットで考える必要があります。それが「ビジネス」ですよねという話なので、技術力の一点突破ではいつか必ず限界が来てしまいます。
激動する半導体業界において、日本がどのようなポジションを築けるかは、技術力だけでなく、戦略的思考と経営力にかかっています。ラピダスの技術的成功は確かに意味があるが、それを事業的成功につなげられるかどうかが、今後の日本の半導体復活の「真の試金石」となるでしょう。
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