韓国人が「鬼滅の刃」に感情移入する理由 400万人突破の「爆発的」ヒット ゾンビ映画との親和性の指摘も
家族の絆を描く
日本の大ヒットアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」が韓国で空前の大ヒットを記録している。8月22日に公開されると累計観客動員数はたちまち400万人を突破。2021年公開の前作「無限列車編」の220万人の倍を行くハイペースで、現地メディアは「爆発的」と表現するほどだ。(※以下、ネタバレを含みます)
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海外エンタメ事情に詳しい放送記者がこう話す。
「韓国で公開された日本アニメで過去最大の記録は2023年に公開された新海誠監督『すずめの戸締まり』の558万人。2位は同年『THE FIRST SLAM DUNK(ザ・ファースト・スラムダンク)』の490万人で、3位は17年に公開された新海監督の『君の名は。』の393万人でした。『無限城編』はすでに3位を抜き去っておりこのペースだと『スラムダンク』を超えるのも時間の問題でしょう」
「鬼滅の刃」は鬼になってしまった妹を救おうとする兄の奮闘を描いた明解なストーリーで、美しい映像と華やかなアクション、そして家族愛、努力、成長というテーマは国籍、年齢を問わず共感できる要素だ。
それにしても「無限城編」の人気は尋常ではない。観客300万人を突破するのにかかった時間がわずか10日。今年最高の観客動員数500万人を突破した韓国実写映画「ゾンビ娘」より1日速いスピードだ。
大手紙の東亜日報は「作品自体の完成度は高く口コミに乗って映画は大ヒットしている。特に悪党である血鬼・猗窩座(アカザ)の人間時代、悲劇的な過去が観客の思いやりと共感を得た」(6日付電子版)と大ヒットの背景を分析している。
実際、「鬼滅」に関する当地のSNSを見ると「日常から完全に離れて没入してしまい3回泣いた」「ストーリーの感動は『無限列車編』の方が高いが、アカザは悲しかった」「(鬼の)瞳のシーンを見よ。すごいから」など絶賛の声が続く。
韓国映画に詳しいエンタメ誌編集者は傑作が多い韓国のゾンビ作品との共通性を指摘する。
「感染者が高速移動する映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)、ゾンビウイルスが絡む時代劇『キングダム』シリーズ(19年~)、近未来を舞台にマンション封鎖の中でゾンビパンデミックが描かれるドラマ『ハピネス-守りたいもの-』(21年)、ゾンビに支配される学園ドラマ『今、私たちの学校は…』(22年)など、韓国のゾンビ作品はグローバルな人気を得ていますが、多くは家族や友人との絆を描いています。数百年も彷徨い続ける鬼となったアカザは、時代の被害者のように見えますし、家族思いの本来の性格も丹念に描かれています。家族が鬼と戦う『鬼滅』のストーリーはこれらゾンビ作品との類似があり、韓国人が感情移入するのも無理はありません」
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