韓国人が「鬼滅の刃」に感情移入する理由 400万人突破の「爆発的」ヒット ゾンビ映画との親和性の指摘も
「ゾンビ娘」と共通点
実際に同作を見た韓国人男性は「平日昼間とあって観客はまばらでしたが、アカザが一瞬人間に“戻る”シーンで、前列の女性2人組はハンカチで涙をぬぐっていましたね。上映時間の2時間35分はあっという間で、貧困で親をなくしたアカザが鬼になった理由も涙なくしては見られませんでした。ちなみにチケットは1万4000ウォン(約1490円)でした」
前出の通り、韓国で今年ナンバーワンヒットとなっている映画「ゾンビ娘」も「無限城編」同様、主人公がゾンビとなった家族のために奮闘する物語だ。これは単なる偶然ではないようだ。
「2018年の『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督は、韓国の人気俳優を集めた『ベイビーブローカー』を22年に発表しましたが、韓国では予想外の不作となりました。これは血のつながらない疑似家族を描いたためで、父系制血縁主義が強い韓国では惨敗して当たり前だったわけです。しかし、『無限城編』は実の父親と息子の絆がことさら強く印象に残ります。作画の素晴らしさと古典的な家族の物語が人気を支えているのでしょう」(前出のエンタメ誌編集者)
一方、韓国の社会背景を指摘する声もある。現地ジャーナリストがこう話す。
「罷免された尹錫悦前大統領の戒厳令宣布で、北朝鮮との開戦や国内の民主派マスコミ人、政治家を一斉逮捕する計画があったことなどが次々と暴露され、国民は衝撃を受けています。韓国社会そのものがゾンビ化する寸前だったことも、一連のゾンビ作品の人気を後押ししているのでは。貧富や所得格差が拡大するなか家族をどう守るのか、といった韓国社会の苦悩をゾンビや鬼は映し出しているのかもしれません」
「鬼滅」の快進撃はどこまで続くのか――。
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