阪神史上最速V 「執念の神の手タッチ」や「世界的大記録」でライバル球団を「5弱」に突き落とす!

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 9月7日にNPB最速Vを決めた藤川阪神。優勝決定時点で2位・巨人に17ゲーム差、2位以下のチームがすべて勝率5割切りというぶっちぎりの栄冠ながら、ゴールまでの道のりは、けっして平坦ではなかった。絶対に負けられない試合で、チームに貴重な勝利をもたらした名場面を振り返ってみよう。【久保田龍雄/ライター】

一世一代の“忍者プレー”

「神の手」タッチと絶賛されたスーパープレーが、首位固めにつながる大きな1勝をもたらしたのが、7月2日の巨人戦だ。

 6月に7連敗を含む11勝14敗と負け越し、2位・広島に3.5ゲーム差に迫られた阪神は、7月1日からの3位・巨人との3連戦の結果が、今後を占う重要なカギとなった。

 初戦は才木浩人をはじめ6投手の必勝リレーで2対1と逃げ切ったが、翌2日も巨人・井上温大、阪神・大竹耕太郎の投手戦となり、7回まで0対0。勝利の女神はどちらに微笑むかわからなかった。

 試合が動いたのは8回裏。2死から森下翔太、佐藤輝明の3、4番が連続四球で一、二塁としたあと、大山悠輔のショートへの打球が泉口友汰のグラブをはじく(記録は内野安打)。セカンド・吉川尚輝がカバーする間に、二塁走者・森下は三塁を回り、一気にホームへ。捕手・甲斐拓也のタッチをかいくぐり、左手でベースタッチを試みたが、わずかに届かず、オーバーランの形になった。

 それでも森下はあきらめることなく、体勢を変えて今度は右手でタッチ。甲斐も素早くタッチし、山本貴則球審は「アウト!」をコールした。

 だが、藤川球児監督がリクエストを要求すると、リプレー検証でセーフに覆り、「神の手」タッチが1対0の勝利をもたらした。

「1回目のタッチのときは、甲斐さんが横にズレたのが見えた。自分もホームベースにタッチしたかわからなかったが、確実に触れられてなかったので、もう1回触りに行った。あんなホームのクロスプレーは初めて。結果として良かった」(森下)。

 ふだんは一発長打が売りの3番打者が見せた一世一代の“忍者プレー”だった。

 連勝で流れを引き寄せた阪神は、翌3日も森下の高校(東海大相模)の先輩にあたる豊田寛のサヨナラ犠飛により、3連戦のいずれも1点差勝ち。さらに7月10日まで怒涛の11連勝を記録し、2シーズンぶりVに向かって大きく前進することになる。

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