【夏ドラマ・トップ10】1位の松潤は「ミラクル感」が出すぎた…テレ朝には「新刑事ドラマ」誕生

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月9の若者路線の見直し

 児童相談所の日常を描いたフジの月9「明日はもっと、いい日になる」も支持を得た。親と子が抱える問題を真正面から捉えたのが良かったのだろう。

 視聴者の年齢は高い。社会問題に高い関心を持つのは中高年以上の人に多いからだ。月9の前作「続・続・最後から二番目の恋」もそう。若い視聴者は少なかった。主演が小泉今日子(59)と中井貴一(63)のアラ還コンビで、シニアたちの物語なのだから、そうなるのは当たり前である。

 次回の月9「絶対零度~情報犯罪緊急捜査~」(10月スタート)も主演が沢口靖子(60)で、中高年以上が好みがちな刑事モノ。やはり視聴者の年齢は高くなるだろう。プロ集団のフジにもよく分かっているはずだ。

 月9はF1(女性20~34歳)層狙いを約40年続けてきた。それが転換期を迎えている。年齢の高い視聴者も獲りに行っている。不思議な話ではない。人口形態が変わって、F1層の数が少なくなった上、この層はテレビ離れが進んでいるとされるのだから。スポンサーは日用品販売のエステーなどだから、視聴者の年齢を上げても支障はない。

 日テレの「放送局占拠」は一定の支持を得た。もっとも、占拠シリーズ第1弾「大病院占拠」(2023年)の全回平均個人は4.3%(世帯7.0%)。第2弾の「新空港占拠」(24年)も同4.5%(世帯7.6%)なので、かなりダウンした。メインターゲットである若者の視聴率も突出して高いわけでもない。

 このドラマの第1弾、2弾は「つまらない」「くだらない」などと批判された。ゲームをそのまま物語化したような全く新しいタイプのドラマで、中高年以上の視聴者は眼中にないような内容だったからだ。

 今回の第3弾「放送局占拠」は批判をほとんど聞かなかった。だが、その代わりに勢いが落ちている。

 毎回、占拠する建物を変え、ほかにも新たな趣向を懲らしているが、基本のフォーマットは同じなのだから、いずれは耐用年数が過ぎる。視聴率低下はやむを得ない。

 日テレの秋ドラマは「ぼくたちん家」(10月12日スタート、午後10時半)など。このドラマの主演は及川光博(55)で動植物園に勤務する男に扮する。同性愛者であり、手越祐也(37)が演じる中学教師に恋をする。この教師も同性愛者だ。

 さらに白鳥玉季(15)が扮する中学3年生が及川に対し「3000万円で親になってほしい」と言い出す。家族や愛情の形を従来とは違った表現方法で描くようだ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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