「日本政府とJICAが自治体とグルになって移民政策を推進」という“陰謀論”が拡散 自治体の担当者は「”政府を信用するな”という過激な方も」
“確信犯”だった可能性
「『ホームタウン』という名称は、非常に誤解を生みやすい表現だと思います」
そう指摘するのは、広告業界出身で、デジタルマーケティングに詳しい桜美林大学准教授の西山守氏。
「『生まれ故郷』という意味に捉えられてしまう言葉を、なぜ名称に採用したのか。その説明を国内外にしっかりしなければいけません。公的機関は“伝える”ことはしても“どのように伝わるか”を意識していないことが往々にしてあります。昨今のSNSは排外的な言説が拡散しやすい。そうした風潮の中、国際交流を目的とする事業で“移民促進”や“外国に乗っ取られる”という伝わり方をしてしまう可能性を、あまり意識していなかったのではないでしょうか」(同)
曖昧な名称の下で“誤報”が起きてしまえば、世間の疑心暗鬼は簡単には拭えない。加えて、今回は本当にナイジェリア政府の誤解だったのか。むしろ“確信犯”だった可能性を指摘する声もあるのだ。
フェイクニュースの“前科”がある、ナイジェリアのティヌブ大統領
農業と食料の専門家で、アフリカの現地事情にも精通するジャーナリスト・浅川芳裕氏が解説する。
「今回ナイジェリア政府が展開した『日本への特別ビザ』などの“偽情報”は、単なる誤解・誤報ではなく、意図的かつ制度的な情報操作に基づいています。注目すべきは、ナイジェリアが『大統領府情報局』と『情報・国家指導省』という二元的な国策広報体制を取っていることです。日本側の抗議で前者は対外的に声明を修正していますが、後者の主導するSNSでは、国内向けに出した“日本へ移住できる”という趣旨の説明を、いまだに放置し続けているのです」
そもそも、支持層の少ないナイジェリアのティヌブ大統領には、こんな“前科”があるという。
「国内の経済基盤が弱いナイジェリアでは、国民に海外で出稼ぎできる環境を用意することが、政権にとって格好のアピール材料となります。2023年9月にも、ティヌブ政権は“UAEがナイジェリア人への渡航禁止を解除して、ドバイ便が再開する”と発表しましたが、UAEから全否定されてしまいました」(同)
結局、UAEによる厳しいビザ規制は変わらないにもかかわらず、ティヌブ政権は国民の歓心を買おうとして“ビザ解禁は近い”とフェイクニュースを流し続けたとか。
「ナイジェリア人の名誉のために言えば、一連の日本に関するティヌブ政権の発表はプロパガンダだと見抜かれてもいて、野党をはじめ国民の中から疑問視する声が上がっています」(同)
プロパガンダがお家芸の政権が統べる国と関係を築くなら、日本側も強(したた)かであらねばならぬところ。安易なネーミングで相手に付け入る隙を与えた上に、世間へいらぬ不安を生じさせたとなれば、大混乱の真犯人は自ずと明らかだろう。
前編【「日本が移民に乗っ取られる!」 人々が勘違いしてしまった“元凶”とは 「アフリカ・ホームタウン」騒動を振り返る】では、「日本に移民が押し寄せる」という勘違いが生まれた理由について報じている。






