なか卯の「親子丼」絶賛で話題の75歳 「矢沢永吉」がカリスマ性を失わない理由

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人間的な魅力

 ライブへの姿勢にも矢沢の哲学がある。かつてはガラの悪い熱狂的なファンばかりが集まり、暴走することもあったのだが、彼は「もっと開かれたライブにしたい」と考え、酒やコールを禁止するルールを導入した。結果として、幅広い世代が安心してライブに参加できるようになった。今では矢沢のライブには10代から60代以上までが集まり、世代を超えた共有体験が生まれている。

 また、アーティストとしての実績に加えて、彼には人間的な魅力もある。8月24日放送の「日曜日の初耳学」(TBS系)では、矢沢永吉が出演。林修のインタビューに応じていた。その中で、彼が「なか卯」の親子丼のおいしさを熱弁したことが話題になっていた。大スターである彼が庶民的なチェーン店のメニューを褒めていること自体に何とも言えないかわいげがあった。話をしたことで宣伝になっているのではないかと笑って、「(なか卯の)社長、何かよろしく」とおどけてみせた。こういう人間味のある部分を見せることで、ステージ上の姿とのギャップが生まれて、ますます魅力的に見える。

 矢沢は今も挑戦をやめていない。9月24日には6年ぶりとなるオリジナルアルバム「I believe」をリリースする。70代中盤のアーティストが新作を発表すること自体が驚異的だが、彼はまだまだ歩みを止めようとしていない。その姿勢が同世代のファンに「自分もまだがんばれる」と思わせて、勇気を与えている。

 現役のアーティストとして意識を高く保ちながらも、新しいものを受け入れて時代の変化に対応して、庶民的な一面も見せている。彼がいまだに多くの人に支持される根本的な理由は、「矢沢永吉」という生き方そのものにある。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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