「買うかと聞かれると、私はノー」 経営者が注目する「ドバイ不動産投資」の“落とし穴”を専門家が指摘

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住民税も相続税も贈与税もなし

 8月下旬の某日、東京駅からほど近いビルの会員制クラブには40人ほどの招待客が詰めかけていた。中央のモニターにはUAEを構成する首長国の一つ、ドバイの風景が映し出されており、そこへ中東系の風貌をした不動産会社幹部が登場する。ドバイの不動産投資を勧誘する“商談会”だ。

 出席した会社経営者によると、

「ドバイというと元参院議員のガーシー(東谷義和氏)が逃亡生活を送るなど、怪しい連中が集まるイメージですが、不動産投資では、非常に魅力があると聞いて行ってみたんです」

 不動産会社の幹部いわく、人口368万人のドバイは、2040年に2倍近くに膨れ上がることが見込まれており、多くが外国からの富裕層なのだという。中でも、投資家を引き付けるのは、税制だ。

「説明会でも強調されていましたが、ドバイはタックスヘイブンなのです。所得税がなく、住民税や相続税・贈与税もない。不動産にかかる固定資産税もありません。不動産を購入した場合、かかってくるのは名義変更料として物件価格の4%だけ、とのことでした」(同)

専門家が「買わない」理由

 それだけではない。例えばドバイで200万ディルハム(約8000万円)の不動産に投資すると、国から「ゴールデンビザ」なるものがもらえる。10年間有効で、これがあれば簡単に銀行口座が作れるし、家族も呼び寄せられる。

「人口が増えているから、マンションを貸し出しても年間5~8%の利回りがある。一定期間、家族と現地に住んで譲渡すれば税金がかからない。現地はショッピングモールがたくさんあって日本人も4000~4500人住んでいる。和食レストランも充実しているというのです。正直、投資したくなりましたねえ」(前出の会社経営者)

 東京都心のタワマンが高騰する中で、まだ割安というのも気になったという。実をいうと、目下、東京ではドバイへの不動産投資を誘う説明会が各所で開かれている。

 そこで、不動産アナリストの森島義博氏に聞いてみる。

「ドバイは法律が整備されており、不動産投資しやすい環境だと私も聞いています。しかし、買うかと聞かれると私はノー。不動産業は別名“トラブル産業”と呼ばれるほど問題物件も多い。法律の細かいところまで熟知でき、肌感覚で取引できる日本の方がやりやすいですからね」

 ドバイ物件の購入者の半分は税金対策が目的ではないか、と森島氏。約8000キロも離れたところなら、税務署も追いかけられまいというもくろみなのだろうか。

週刊新潮 2025年9月4日号掲載

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