筋金入りの「ロシア諜報部員」とバーで密会…「海自スパイ事件」自衛官逮捕の決定的瞬間 「別々にテーブル客が一斉に立ち上がって」

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わずか20分間ほどの捕物劇

 店内は仕事帰りのサラリーマンや若いカップルの多いありふれたバー。後から入ってきたグループ客は、ジーパンやOL風のスーツを着ていたらしいが、なんとなく異様な雰囲気だったという。

「明らかに不自然でした。別々のグループだったはずなのに、互いに話を始めたり、テーブルを移ったりし始めたのです。で、突然、全員が立ち上がって奥の窓際のテーブルへ向かった。あっという間でした。窓際のテーブルは取り囲まれ、奥の2人の姿が見えなくなってしまったのです。僕たち店員は何が何だかワケがわからないまま呆然。

 と、窓際の席を取り囲んでいる女性の1人が、“ちょっとスピーカーの音量を下げてください。すぐに終わりますから”と言う。そして男性が私の方へ近づいてきて、“神奈川県警ですけど迷惑かけるね。代金は払うから”と警察手帳を見せられた。実は刑事さんたちだったのです。それから刑事さんたちは2人を取り囲んだまま店を出て行きました」

 Aたちの飲食代は消費税込みで2520円。14人の捜査員の分は4830円。わずか20分間ほどの捕物劇だったという。

相手は筋金入りのロシア諜報部員

「捜査本部では、昨年9月から自衛隊のAとロシア大使館のボガテンコフをマークしていました。外事の欧亜担当者と北東アジア担当者で総勢30人の体制を組んで、尾行を開始。以来、2人の自宅にも張り込んで行確(行動確認)を続け、今回の逮捕にこぎ着けたのです」(警視庁の公安担当)

 もっとも、捜査員が任意同行を求めたロシア大使館のボガテンコフは、外交特権を夕テにその場で拒否。7階のバーからエレベーターで降り、とめてあった車に平然と乗り込んで走り去ったという。

 そのボガテンコフは、筋金入りのロシアの諜報部員で、対外情報庁(SVR)=旧KGB=と並ぶ諜報組織である軍参謀本部情報総局(GRU)所属。3年前に駐日ロシア大使館の武官として来日した。GRUの前身は、かのリヒャルト・ゾルゲが所属していた旧ソ連赤軍第4本部で、世界屈指のスパイ組織である。

 事件は、相手が相手だけに、新聞やテレビで連日の大報道。元陸上自衛隊将補が引き起こした80年の「対ソ連大使館付武官・コズロフ事件」以来、20年ぶりの自衛隊スパイ事件と、大騒ぎしているのだ。

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