「人間やめたい」「サーモン食べたい」獄中から届いた手紙…「頂き女子りりちゃん」の“今”

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求刑に「ショックです」

――一審で懲役13年の求刑を受けた際、渡辺さんはどのような様子でしたか。

「ショックです」という手紙が来ました。実感が伴っていなかったのだと思います。最初は本当に分かっていなくて、控訴審が進むにつれてどんどん様子が変わっていった、という印象です。

――どのように様子が変わったのでしょうか。

 はじめは平気そうに見えたのですが、獄中日記の内容がどんどん変わっていきました。母親のことを突然非難し始めたり、ほかの関係者を糾弾し始めたりして、「自分だけがこんな辛い思いをしているのはなぜ」という印象を受けました。

 一審の判決が出て、8年6か月も外に出られないという現実が本当に実感されたから、“恨み”が全部出てきたのだろうと思いました。そこでやっとリアルを感じたのかな、と。

 ただ、上告したあたりから、またリアリティが薄れていったようにも見えました。上告後に会った時も、私が「最後の面会だ」と思って行ったら「あ、どうも」と普通に元気でした。「私、上告するんです」と。「まだまだ会えますよ」という感覚で、刑を受ける実感はなかなか湧いていなかったのだと思います。

 拘置所(刑事事件の被疑者・被告人を収容する施設)は比較的自由な部分があるので、実感が湧きにくかったのかもしれません。だからこそ、受刑者となって笠松刑務所にいる今は、かなり精神的に厳しい状況にあるのではないでしょうか。

――最近の渡辺受刑者とのコンタクトはありますか。

 一度、手紙が来ました。

手紙に身構えた

――手紙がきてどう思いましたか。

 服役中、受刑者からは月に限られた数しか手紙を出せないので、私のもとに手紙が届いたときは本当に驚きました。突然だったので、「訴訟でもされるのかな。出版差し止めかな」と身構えました。

 内容は「本が出るの、おめでとうございます」「本が出る前に先におめでとうって伝えたかったので」といったもので、こちらとしては「おお……」という複雑な気持ちです。被害者のことを考えたら、そこで喜ぶわけにはいきませんでした。

 実は、私から今回の本を送っているのですが、笠松刑務所側から「更生に差し障りがある」と言われて渡してもらえず、表紙すら見ていないそうです。ですから、「私はこういう気持ちでこの本を書きました」という手紙を送りました。

――そのほか、手紙にはどのようなことが書かれていましたか。

「人間やめたい」と書いてあったり、彼女が中で描いていた少女漫画のキャラクターのイラストが入っていたり。刑務所の生活のこと、「今日は何が出た」という食事の話や、左腕がぐちゃぐちゃになってしまった、という自傷を示唆する記述、日常のメモですね。「めちゃくちゃ暑い」「サーモン食べたい」とか。

――手紙から、被害者への反省の言葉は感じられましたか。

 それはありませんでした。

――手紙全体の印象は?

 全体としては、かなりしんどそうだという印象です。そして「ここから長いだろうな」と思いました。刑務所の中の体感時間は、おそらくすごく長いだろうな、と。

 ***

 第3回【「頂き女子りりちゃん」事件、なぜ「おぢ」は大金を渡したのか コロナ禍の孤独と「まさか自分が」の心理】では、宇都宮氏が事件の背景について語っている。

宇都宮直子
1977年3月27日、千葉県出身。多摩美術大学美術学部卒業後、出版社勤務等を経て、フリーの記者に。事件や芸能分野を中心に取材活動を行う。今年、『渇愛 頂き女子りりちゃん』(小学館)で第31回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に『ホス狂い~歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る~』。

デイリー新潮編集部

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