「頂き女子りりちゃん」事件、なぜ「おぢ」は大金を渡したのか コロナ禍の孤独と「まさか自分が」の心理
『渇愛 頂き女子りりちゃん』著者・宇都宮直子氏に聞く
「頂き女子りりちゃん」こと渡辺真衣受刑者(27)は、「おぢ」と呼ばれる年上男性3人から1億5000万円をだまし取ったなどとされ、実刑判決を受けた。彼女と23回も接見を重ねた『渇愛 頂き女子りりちゃん』(小学館)の著者・宇都宮直子氏は、被害にあった男性や渡辺受刑者の母親にも取材している。一体、なぜ、このような事件が起こってしまったのか。(全4回の第3回)
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――事件が起こった背景として、2020年から流行した新型コロナウイルスは関係していると思われますか。
はい、関係していると思います。コロナ禍によって出会いの機会が極端に少なくなりましたよね。被害者の中には、「もしこのまま家族もいないまま死んでしまったらどうしよう」という不安を抱えていた方もいました。
そのような中で、「もしかしたら結婚して家族になってくれるかもしれない」、「一人ではなくなれるかもしれない」という期待が、通常の時よりも強く後押しされたのだと思います。
――被害者たちが一度に何千万円もの多額のお金を振り込んでしまったのは、なぜだと考えますか。
「まさか自分が騙されるとは思わない」と思っていた点に尽きると思います。
――渡辺受刑者が裏で被害男性に対して「キモい」などと酷い言葉を投げかけていたことについて、どう感じましたか。
おそらく彼女としては、自分が過去に受けたことをやり返しているつもりだったと思います。裏付けは取りきれなかった部分ではありますが、彼女が言うには、年上の社会的地位のある男性たちから、性被害を含む様々な被害を受けていたといいます。
助けを求めて相談していた相手に結局性被害を受けるなど、「自分は人として扱われていない」と強く感じたことへの復讐心があったのだと思います。だからこそ、「自分もそういう相手に対して人と思わなくていい」という裏返しの行動に出たのではないでしょうか。
ごく普通の社会人
――被害男性について、印象深かったことはありますか。
私が取材できた被害者男性は一人だけですが、その方について思ったのは、「騙されてもしょうがない」とか「騙されていい」というような人ではありませんでした。人にも気を遣えるし、社会生活もきちんと営んでいる。ズルをしてやろうとか、得してやろうとか、そういった印象は全くありませんでした。
世間には「若い娘に騙された愚かな男性」というイメージを持っている人が非常に多いと思いますが、そうではなく、本当にごく普通の、社会人として仕事をしていて、近所付き合いも良好な方でした。
――渡辺受刑者の母親にも取材されています。どのような印象を持っていますか。
あくまでも私から見てですが、渡辺さんが裁判で言っていたような母親のイメージは全く感じませんでした。渡辺さんは裁判で「母親は自分には無関心で不倫までしていた」と話したことに、母親は非常にショックを受けていたようです。ただ、時間が経つにつれて「無関心」ということに関しては「(娘が)そう思っていたのであれば、それはそうだったのだろう」と娘の感情を受け入れるようになりました。
――家庭環境の悪さが事件につながったという見方がありますが、どう思いますか。
確かに父親は警察沙汰になるようなことも起こしていますし、家庭内で何かしら問題はあったのだと思います。しかし、「完全に崩壊した、破綻した家庭」という印象は正直言ってありません。もちろん、超健全なハッピーハッピーな家だったとは言えないですが、そこまでぐっちょんぐっちょんで何をしていたんだというレベルではないと思います。
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