ホストクラブでシャンパンタワーにダイブ、救急搬送…「頂き女子りりちゃん」の規格外の行動

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「共感力」や「感性」

――マニュアルに出てくる「ギバーおぢ」などの分類は、具体的にどういうものですか。

 いわゆる“おぢ”(おじさん)の中でも、与えたがるタイプ(ギバーおぢ)を見極めて狙い、損得勘定が強い人(マッチャーおぢ)や、逆に奪う側(テイカーおぢ)は弾く、という発想です。要は「助けたい気持ち」を持っている相手に、物語とフレーズで“助けさせる”。それを前提にしているので、会話のテンプレがよく効いたのだと思います。

――マニュアルの流れ(信頼構築→回収→アフターケア)についても教えてください。

 まず信頼関係の構築で“自分の物語”を置きます。家族不和や学費、治療費などの弱者の語りですね。次にお金のお願い(回収)へ入るときは、金額の根拠を“正義”でラッピングする。終わったらアフターケアで感謝や未来の匂わせを入れて、返金の芽を摘む。LINEの文面や間合いが細かく手順化されているのが特徴です。

――渡辺受刑者には熱狂的な女性ファンが多くいましたが、どのような点に共感し、惹きつけられていたのでしょうか。

 熱狂的なファン、いわゆる「濃いオタク」は、彼女の「共感力」や「感性」に惹かれていたのだと思います。彼女の感性は圧倒的に女性に向けられています。「社会で生きづらい」「社会で自分は虐げられている」と感じている人たちの多くが、彼女に共感してしまうのです。

 渡辺さんはそういった思いを本気で感じているため、上辺で「そうだよね」と言うのではなく、「私もそうだったし、そうやって生きてきたから、じゃあみんなで社会とか“おぢ”とかに復讐してやろうぜ」という根っこの部分がある。それがファンを惹きつけたのではないでしょうか。

 男性からお金を奪うという行為自体にも、ある意味で復讐的な部分があったのだと思います。オンラインサロンなどでお金を払っていったファンは、こうした彼女の根源的な思想に共鳴していたのではと感じました。

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 第1回【歌舞伎町に住み込み取材で見えた「頂き女子りりちゃん」事件の“闇”とホスト業界の激変】では、宇都宮氏が取材中の思いや現在の歌舞伎町の様子を語っている。

宇都宮直子
1977年3月27日、千葉県出身。多摩美術大学美術学部卒業後、出版社勤務等を経て、フリーの記者に。事件や芸能分野を中心に取材活動を行う。今年、『渇愛 頂き女子りりちゃん』(小学館)で第31回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に『ホス狂い~歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る~』。

デイリー新潮編集部

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