熾烈な首位争いを制して「日ハム」優勝はあるか? 完投数“12球団トップ”、新庄監督の「投げさせて鍛える」投手起用がカギに

スポーツ 野球

  • ブックマーク

投げさせて鍛える新庄スタイル

 近藤、山川、中村の打球は五十幡、矢澤のところには飛んでいないが、新庄監督に言わせると、救援マウンドに送った齋藤友貴哉(30)のボールのスピードと強さ、近藤たちのスイング軌道、さらに打球が飛ぶ方向などを分析したデータも考え、守備位置を替えたそうだ。

 五十幡、矢澤はともに俊足強肩である。五十幡は右利き、矢澤は左利きの違いこそあれ、対戦する打者ごとに入れ替える必要性はあまり感じられなかった。しかし、新庄監督は、

「一人一人(との対戦)、一球一球が大事になってくるから」

 と、入れ替えに理由があったことを説明する。この勝負観と采配は新庄監督ならではといえるだろう。他の指揮官では考えつかないものであり、「新庄劇場」の真髄とも言えそうだ。

「飛躍した発想かもしれませんが、野村克也氏が阪神監督だった時代、遠山奨志氏(58)と葛西稔氏(58)を打者一人ずつで入れ替えて使った継投策を思い出した関係者もいました」(前出・スポーツ紙記者)

 また、第2戦ではドラフト1位ルーキーの柴田獅子(19)を2番手で登板させた。柴田の一軍再昇格はこの第2戦の行われた8月23日であり、ソフトバンクは対戦データを持っていない。柴田は昨秋のドラフト会議でソフトバンクも1位入札し、抽選で破れている。その“元恋人”に抑えられたダメージは、決して小さくはないだろう。

「優勝争いを左右する直接対決を抑えた柴田も立派ですが、興味深いのは新庄監督が3イニング目のマウンドにも彼を送り出したことです。最初の2イニングを内野安打1本に抑えたので、そのまま交代させても良かったんですが、あえてクリーンアップとの対戦が避けられない3イニング目のマウンドに送り出しました」(前出・地元メディア関係者)

 近藤、山川、牧原大成(32)に連打され、満塁となったところで柴田は交代。途中、柴田を交代させるタイミングはあっただけに、新庄監督が失点されるギリギリまで投げさせたという印象だ。この投手起用に今季の日本ハムの強さが隠されていた。

「先発投手陣が好調です。エースの伊藤大海(28)の13勝を筆頭に、加藤貴之(33)と北山亘基(26)が8勝。チーム完投数は12球団断トツの21。伊藤は中6日の等間隔でほぼ登板してきましたが、他の先発投手は7日以上も間隔が空くなど不規則です。『中6日で疲れが取れなければ』という、新庄監督ならではの配慮です」(前出・スポーツ紙記者)

 北山は前半戦、決して好調ではなかった。新庄監督はその北山を6月のセパ交流戦のヤクルト戦で3戦全てリリーフ登板させている。「十分な休養を」とする先発陣への配慮とは真逆の起用法だが、この連投で復調のきっかけを掴んだのだろう。当時、北山は「(不振脱出のカギを)突然閃いた」と話している。新庄監督はそうした試行錯誤が続いている選手の迷いを敏感に受け止めているようだ。

「新人の柴田にあえて試練を与えたのも窮地に立たされて初めて分かることがあるからです。失点して傷つく前に交代させたのは、次回も重要な場面で起用するため」(前出・地元メディア関係者)

打順に頭を悩ます新庄劇場

 チーム関係者によれば、新庄監督は多忙で、シリアルを掻き込みながら移動することもあるという。

 多忙の一因は打順編成で、常に相手の先発投手に対し、どの打順で臨むのがいちばん得点効率が高いのかを考えているからで、「オーダー表を書いては消し、また書いて」を繰り返しているそうだ。そのため、食事を摂る時間もなくなり、シリアルを歩きながら掻き込む。体調を心配する球団スタッフに「元々、少食だから」と笑って返すそうだ。

「9月の課題は調子の落ちてきた万波、野村佑希(25)、清宮幸太郎(26)を復調させ、打線のつながりを取り戻すこと」(チーム関係者)

 チーム本塁打数は12球団で唯一3桁の106本(同)。両翼が狭い本拠地の「地の利」も大きいが、食事もままならない姿は清宮たちも知っている。“ボス”のために奮起しなければの思いは秘めているはずだ。

 ソフトバンクとの直接対決は、あと3試合残っている(9月9日、18日、30日)。この3試合が決戦の場と見る声も聞かれたが、日本ハムは最下位・千葉ロッテとの対戦が8試合も残っている。就任4年目、「新庄劇場シーズン4」は大団円のフィナーレとなる可能性が高い。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。