有名大卒でも門前払い…アメリカを襲う就職難「AI氷河期」は日本にも到来するか? 識者が「日本と米国では企業の性格が大違い」と指摘する理由
生成AIも新入社員も“不完全”
「取材しないでも書けてしまう、いわゆる“コタツ記事”のAI化は日本でも進んでいます。しかし最先端のAI技術を使っても、『寿司屋の板前ロボット』を開発することは無理です。お客さんの顔を見ながら雰囲気を察し、会話でもお客さんを楽しませながら、注文された寿司を握ることは今のAIには不可能なのです。同じように生成AIはコタツ記事を書くことはできても、今のところ専門的な論文や論評を執筆することはできません」(同・井上氏)
本来であれば、発展途上の技術である生成AIと、経験ゼロの新入社員は互いの短所を補いあう関係にあると言える。
「そもそも日本の企業は、アメリカの企業ほどドライではないと思います。アメリカなら人件費を削減するためなら平気で新卒採用を減らすでしょうが、日本の企業は新人を育てることが大好きです。アメリカの企業は社内に1人のスーパーマンがいればいいというスタンスですが、日本企業はチーム力や組織力の充実を好みます。そう考えると、日本ほど生成AIの適切な利用法を編み出せる国は他にないと言えないでしょうか。代替可能な仕事は片っ端からAIに任せるアメリカ企業とは異なり、日本企業は『どうやったらみんなで生成AIを活用できるか、会議を開いて考えよう』となるはずです」(同・井上氏)
AIで“士業”は全滅!?
欧米も含め、生成AIに関しては「AIは社会を豊かにする」か、「AIで失業者が続出する」といった極端な言説が多い。井上氏は「これは非常に問題です」と言う。
「日本でもAIバンザイか、AI危機をあおる論調しかありません。AI危機説なら、エリート層であるはずの弁護士や公認会計士、税理士といった士業でさえ生成AIで置き換えが可能だと以前から指摘されてきました。自分たちの業界もAIに侵略されるのではないかと不安になる人も多いと思いますが、現実はそれほど単純ではないはずです。弁護士は依頼主とコミュニケーションを取りながら信頼してもらうことが必要ですが、そんなことはAIにできません。私たちにとって理想的なAI活用のバランスが存在するはずで、それを粛々と探していけばいいだけなのです」(同・井上氏)
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