5キロ7800円も… 新米価格は「昨年の1.5倍から2倍に」 備蓄米には業者からクレームが殺到 「売り切れないのでキャンセル」「店頭陳列はやめた」
「備蓄米の店頭陳列をやめた」
実際のところ「備蓄米はもう置いていない」と明かすのは、スーパー「アキダイ」(東京都練馬区)の秋葉弘道社長だ。
「当店では、8月前半に備蓄米の店頭陳列をやめてしまいました。入荷当初は購入を希望される方で、店先に長蛇の列ができることもありましたが、7月中旬には落ち着きました。現在はほとんどのお客様が、備蓄米に比べて値段の高い銘柄米を購入するようになっています。やはり備蓄米は銘柄米と比べて味が劣るだとか、調理方法に気を使うといった声はありましたし、皆さん普通のお米を食べたいのではないでしょうか」
あれだけ注目された備蓄米の放出も虚しく、相も変わらず「普通のお米」である銘柄米は高値のまま。しかも小泉氏が新たな一手を打てずにいる間にも、米価を巡る状況は刻一刻と悪化の一途をたどっているのだ。
その一番の理由は、国産米の約4割を扱うJAが収穫前に農家へ支払う「概算金」が、軒並み高騰していることが挙げられる。
「各地のJAが概算金を大幅に引き上げ」
ここで簡単に、コメが農家から消費者に届くまでを解説しておこう。
一番シンプルなのは、農家が小売店や消費者にコメを直販する形。それ以外だと、農家が卸業者に売ってから小売店を経る形もある。戦後から主流を占めてきたのは、各都道府県のJAが農家からコメを買い取る形だ。この際に概算金が発生するわけだが、実際に販売額が決まった後に過不足は精算される。各地の卸業者にとっては相場の目安にもなる概算金が、各地のJAで過去最高を記録しているのだ。
日本一の生産量を誇るコメどころのJA全農新潟県本部は、コシヒカリ60キロあたりの概算金を3万円にしたと発表した。昨年の1万7000円と比べても実に76%の引き上げ。北海道の「ななつぼし」と福井のコシヒカリは2万9000円、青森の「まっしぐら」も2万6000円と軒並み高額となっている。概算金は1万円上がると、5キロあたりの小売価格が約1000円前後高くなるとの試算もある。農家はえびす顔でも、消費者には手痛い出費と化すのだ。
コメ問題に詳しい宇都宮大学農学部の小川真如(まさゆき)助教によれば、
「昨年もJAは概算金を前年に比べて引き上げましたが、それでもコメが集まりませんでした。そうした経験を踏まえて、今年は前年比1.7倍前後にするなど、各地のJAで概算金を大幅に引き上げているのです。JAは集荷競争では不利な立場。他の業者は後出しじゃんけんで、JAの概算金より高い額を農家に提示して取引を持ちかけてきます。農家自身がネット直販やふるさと納税などで消費者に届けるルートが多様化しており、JAがコメを確保しづらい状況なのです」
後編【「1918年の米騒動」と驚くほど似た状況… 当時の大臣も「農政と縁遠く、犯人探しに躍起に」 農家からは「水田が完全に干上がった」と悲鳴】では、現在の農政を巡る状況と「1918年の米騒動」の驚くべき共通点について詳しく報じる。
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