トランプ氏が“新興国も顔負け”の「政敵排除」 家宅捜査、FRB理事の解任、検察官の調査…投資面での米国信用度が悪化の危険性

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政敵排除は組織的な動きでもある

 トランプ米大統領の政敵排除の動きが加速している。

 連邦捜査局(FBI)は8月22日、政権1期目の大統領補佐官(国家安全保障問題担当)で、かねてよりトランプ氏を批判するボルトン氏の自宅を捜索した。トランプ氏は自身の関与を否定しているが、機密情報の取り扱いに問題があったとボルトン氏を批判しており、FBIがこれを忖度した可能性は十分にある。

 利下げをめぐって議長のパウエル氏と対立する連邦準備制度理事会(FRB)では、理事の1人であるクック氏を強引な形で解任した。このことも政敵排除の一環だと受け止められている。

 政敵の排除はトランプ氏のスタンドプレーだけでなく、組織的な動きでもある。トランプ氏は就任初日に大統領令「連邦政府における武器化の終結」を発出していた。

 それを受けて米司法省が2月に設置した「司法の武器化対策ワーキンググループ」は、トランプ氏やその支持者を捜査または起訴した検察官らの調査が任務とされる。主な調査対象は、2021年の連邦議会占拠事件をめぐり、トランプ氏の関与などを捜査したスミス元特別検察官らだ。

「独裁者」をめぐる発言で物議

 トランプ政権による連邦職員の大量解雇についても同様の批判がある。米中央情報局(CIA)の前長官、バーンズ氏は20日、独裁的な報復であり、異論の封じ込めを目的としていると非難した。

 民主主義が最も定着したとされる米国で、新興国で頻繁に起こる権力者による政敵排除の動きが鮮明になっていることには驚かされる。

 トランプ氏の独断専行も日に日に強まるばかりだ。連邦政府機関のあらゆる業務に介入する動きに対し、歯止めがかからなくなっている感が強い。

 自身の独裁的な行動に批判が高まる中、トランプ氏は25日、「独裁者」と批判されていることに触れ、「多くの人が『もしかすると独裁者がいいかもしれない』と言う。私は独裁者が好きではない。私は独裁者ではない」と発言し、物議を醸した。「多くの米国人が独裁者を望んでいること」を示唆したのではないかといった指摘がある。

35歳未満のトランプ支持者が激減

 だが、実態は異なるようだ。トランプ氏は昨年の大統領選で男性優位主義のアジェンダを掲げ、若年男性の支持を集めたが、その彼らの支持離れが顕著になっている。

 ピュー・リサーチセンターの世論調査結果によれば、2月時点ではトランプ氏に投票した35歳未満の有権者のうち92%が同氏を支持していたが、8月に入ると23%マイナスの69%にまで低下した。年齢別でみたトランプ支持者の中で最も大きな落ち込みだ。

 トランプ政権はDEI(多様性・公平性・包括性)政策への全面的な攻撃を強めるなど、若年男性との約束を実行に移しているが、経済面の失点が響いている。「チップへの課税廃止」などの公約を実現させたものの、直近の雇用統計では製造業などで雇用が減少しており、若年男性にとって厳しい状況だ。

 インフレ傾向も続いており、小売業界はトランプ関税が価格上昇の原因だと批判している。価格転嫁の動きが本格化すれば、状況がさらに悪化するのは間違いない。

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