巨人投手には「投球の意図」が見えてこない…負け越し3連戦でまた見えた阪神との「決定的な差」【柴田勲のコラム】

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四球の数、阪神1に対し巨人は11

 巨人の投手陣は無駄な四球が多い。井上温人が勝ち星を伸ばせない理由がよく分かる。

 前回も、先頭打者への安易な四球は絶対にダメと指摘した。しかし、30日の第2戦で先発すると、1回に先頭・近本光司に四球を与えた。さあ、これからという時である。

 私も経験があるが、守っている野手はエエッである。ましてや近本は不振の真っただ中にいた。どうして攻めないのか。

 前日(29日の第1戦)は山崎伊織の好投もあり、競り勝って連敗を4で止めていた。案の定、中野拓夢が送って森下翔太が中前へタイムリー二塁打、先制を許した。

 よーいドンで前日の流れを止めて、阪神に渡した。井上は5回途中3失点で降板し与四球は3個、船迫をはじめ4人の救援陣は8個の四球を与えた。合計で11個だ。

 試合は3対2で阪神が勝ったが3点はすべて四球絡みだった。対する阪神の四球は先発の高橋遥人の1個のみで、ラファエル・ドリス以下4投手はゼロだった。

 1四球対11四球……分かりやすい。投球の基本はコースと高低だ。最近の投手は球種の多さを誇る。多いと7~8種類はある。どこへ投げようかではなく、どの球を投げようかという思考に陥る傾向がある。でも大事なのは制球力だ。

 藤川球児監督の方針だろう。阪神投手陣はしっかりしていると思う。

3割打者は一人もいないが…泉口が健闘

 岸田行倫が30日から4番に入っている。これは1番・丸佳浩、出塁率の高い、2番・泉口友汰の出塁に期待して3番・岡本和真に返してもらうという狙いだろう。打席も多く回ってくる。

 その泉口だが、打率2割9分3厘は広島の小園海斗に次ぐ2位だ。首位打者を狙える絶好の位置にいる。

 彼はボール球を振らない。追い込まれても手を出さず見極める。開幕時にはファームにいた選手だ。急に打撃が良くなったわけではない。それがなぜ好成績を残しているのか。チームメートは参考にすべきだろう。

 それにしても3割打者が一人もいないのは寂しい。62年に森永勝也さんが首位打者を獲得したが、この年は3割打者が森永さんだけだった記憶がある。(※)

 寂しいといえば、2位のチームが借金を抱えてプレーオフ出場はどんなものかなと思う。

 巨人は2日からヤクルト、中日と続く6連戦だ。早く5割に戻して貯金をして2位確保に向けて頑張ってもらいたい。

 (成績などは1日現在)

 ※この年のセ・リーグの首位打者は広島の森永勝也で打率3割7厘、2位は大洋(現DeNA)の近藤和彦の2割9分3厘。

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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