「国宝」は3時間、「鬼滅」は150分超え…なぜ“上映時間の長い映画”ばかりがヒットするのか 「チケット代の“値上げ”が追い風に」との声も
ヒット作は長編ばかり
今夏、全国の映画館に活況をもたらしている作品が、6月6日に公開された映画「国宝」(李相日監督)と、7月18日に公開されたアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」の2本だ。
吉沢亮(31)が主演する「国宝」は、興行収入が110億円を突破。邦画実写において「南極物語」(1983年、110億円)を上回り、「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(2003年、173.5億円)に次ぐ歴代2位となった。また、来年3月に米・ロサンゼルスで授賞式が行われる「第98回アカデミー賞」国際長編映画賞の日本代表作品に選出されたことが8月28日、日本映画製作者連盟(映連)から発表された。
一方、「鬼滅の刃 無限城編」は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された吾峠呼世晴氏のコミックを原作とする大ヒットアニメ「鬼滅の刃」シリーズのクライマックスとなる、「無限城編」3部作の第1章。8月24日までに興行収入が280億円を超えたと同月25日、公式Xで発表された。「タイタニック」(興収277.7億円、1997年)を抜き、日本国内で公開された映画で、歴代3位に浮上した(なお、20年10月公開の「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、国内で公開された映画史上最高の興収407.5億円を記録している)。
「『国宝』と『鬼滅』にはある共通点があります。というのも、公開される劇場作品の多くは、観客が飽きるのを危惧してか、上映時間が2時間前後の作品が大半です。ところが、『国宝』は2時間55分で、上映前の10分ほどの予告を入れれば3時間超え。『鬼滅』は2時間35分で、いずれも2時間半超えなのです。しかし両作品とも上映回数が多いにもかかわらず、特に首都圏ではどの上映回も盛況。午前中から午後の早い時間にかけて、『国宝』は年配者が多く、夏休みシーズンとあって『鬼滅』はローティーンの子どもたちが多い印象です。両作品ともリピーターは多いのですが、『鬼滅』はどんどん更新される来場者特典がかなりの集客効果を発揮しています」(映画業界関係者)
近年、日本の映画興行は邦画が洋画を圧倒する「邦高洋低」が続いているが、洋画のヒット作2作も「国宝」と「鬼滅」同様、長編映画なのだ。
「5月23日公開のトム・クルーズ(63)主演の人気シリーズ最新作『ミッション:インポッシブル(M:I) ファイナル・レコニング』は2時間49分。そして、6月27日公開のブラッド・ピット(61)主演『F1(R) エフワン』は2時間35分です」(同前)
96年の第1作から約30年にわたり人気を博してきた大ヒットスパイアクション「M:I」シリーズの第8作となったが、興収52.6億円を記録。トム本人によるスタントシーンも健在で、今作では飛び回る小型プロペラ機にしがみつく空中スタントなどが見どころ。今回も主演作の来日ではおなじみとなっている、プロモーションイベントでのファンとの交流にたっぷりと時間をかけた。その甲斐もあって、今年国内公開作品では4位(8月28日現在、以下同)、洋画では1位の興収を記録した。
ブラピ主演の「F1」はモータースポーツの最高峰に挑むレーサーたちの姿を描いたエンタテインメント大作。トムの主演作「トップガン マーヴェリック」(22年)を手がけたスタッフが集い、F1の全面協力を得て、グランプリ開催中の本物のサーキットコースを使って撮影を敢行。洋画では6位の興収となる20.4億円を記録した。
「この4作品に共通しているのは、トイレに立つヒマもないほど、スクリーンに集中できるところです。『国宝』は人間ドラマのみならず、歌舞伎の舞台で演目を演じるシーンが多いのですが、歌舞伎を知らない人でもまったく飽きずにその演目を見ていることができます。それが終わると、濃厚な人間ドラマが展開……目が離せません。『鬼滅』の観客の大半はコミック全巻を読み、アニメも全話見て結末まで知っています。それでも、思わず目が潤むような回想シーンをふんだんに取り入れて、ファンを飽きさせることのない構成に。あっという間の2時間半でしょう。いわずもがな『M:1』は圧巻のアクションシーン、『F1』はサーキットでのド迫力のレースシーンに度肝を抜かれ続けているうちに映画が終わってしまいます」(映画担当記者)
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