「フロムA」の発売日には“電話ボックス”に長い行列が…スマホ世代には伝わらない「テレホンカード」と「公衆電話」が必需品だった時代を振り返る
偽造テレホンカード
だから、多くの人にとってテレホンカードは青春の象徴的な面もあった。しかし、当然ニーズがある場所にはキナ臭い動きもある。それが偽造テレホンカードである。
1980年代後半、建設現場等の肉体労働系の仕事にイラン人が多数従事したことがあった。しかし、バブル崩壊で仕事が失われ、イラン人が上野公園や新宿駅構内等で偽造テレホンカードを売っていたのだ。
数十枚のテレホンカードを持ち、それらをギターの弦をひくかのように音を立て「テレホンカードー!」と目配せしてくる。当時のテレホンカードの技術は杜撰で、使い切ったテレホンカードにパンチされる穴をアルミホイルで塞げば電話をかけられたのだ。この時は100度数(1000円分、実際は105度数=1050円分)のカード11枚をイラン人を中心とした人々は1000円で売っていた。つまり、11550円分の通話料を1000円で賄えた。
さすがにNTTもこの狼藉には黙っておられず、それまでの緑の公衆電話から灰色の公衆電話に変更し、偽造テレホンカードは電話機内に吸い込むようにして使えなくした。だが、この時代はもはや携帯電話への移行期にあたる。今や公衆電話の使い方すら分からない、テレホンカードすら持っていない人々が多数派になっている。最後の通信ライフラインとしての公衆電話の存在意義について議論を深める時期に来ているのでは? 役立つ時も来ると思うのである。




