「デコトラが警察に目をつけられ、逮捕者も…」 大ヒットした「トラック野郎」終焉の理由とは 「興行的にも下火になり“もういいんじゃないか”と」

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「誰も俺の名前呼んでくれへん」

 マドンナに劣らず欠かせないのが、お笑いの要素。主演の二人がドタバタの芝居をするのみならず、由利徹や南利明、なべおさみといった喜劇人たちが脇を固め、作品に花を添えていた。そんなコメディリリーフの一人が、落語家の笑福亭鶴光(77)である。

 鶴光が語る。

「だれかが監督に“どうして鶴光さんを使うんです?”と聞いたら、“あいつはラジオのレギュラー持っとるから”。しゃべるもんね。“こんなん出てますから観てね”って。監督もえらいこと考えてますよ」

 そう出演経緯をネタにするが、当時、ラジオ番組「オールナイトニッポン」のパーソナリティーとして十八番の下ネタを駆使したトークで人気絶頂。シリーズの半分、計5作に出演しており、最初に登場したのは2作目、露店商の役だった。

「あれは博多でね。撮影現場は文太さんのファンでものすごい人だかり。で、みんな“文太! 文太!”言うてね。誰も俺の名前呼んでくれへん。そしたら一人だけ“鶴光!”って言うてくれた。ファンかと思ったら“そこどけ、文太が見えへん”って」(同)

「鼓膜破れたんちゃうかと」

 映画では、太宰治の本を探す桃次郎に成人向け雑誌を売りつけようとする。挙げ句の果てに殴られ、立て看板を頭から突き破った。

「あのシーン、10回ぐらいやったんですよ。噺家(はなしか)は最初にガッとやるから、どんどん疲れてきて、やればやるほど下手になっていくの。でも、役者というのはやればやるほどうまくなっていく。あと、リハーサルだとみんな笑ってくれるんだけど、監督が“いくよ、本番”と言ったら一瞬で静寂。本番はリアクションがないからスベッたと思うねんな」(鶴光さん)

 6作目では“餅すすり大会”の行司を演じた。

「スタートのピストルを鳴らす場面があったんですよ。ほんまにでかい音が鳴るから、最初は耳栓を着けてた。そうしたら監督の指示が聞こえへんねん。それで耳栓を取って、腕を高く上げてピストル撃ったら、監督が“君ね、それじゃカメラに入らないじゃない。耳の横でやりなさい”って。僕、5回くらいやったら、耳がビーンいうて、2~3日耳が聞こえませんでしたね。鼓膜破れたんちゃうかと思いましたわ」(同)

「どんな新人が来ても、笑わせるようにしている」

 そんな「トラック野郎」での経験が、今も仕事に生かされているのだとか。

「一度、鈴木監督や文太さんと一緒に舞台あいさつに行ったことがあったんです。そこで記者がインタビューしはるいうことやったんですが、僕には目もくれず、インタビューもなし。一切無視。僕がそこにいないような扱いで。僕はこういうことは絶対せんとこう思いました。だから、今ラジオにどんな新人が来ても、コマーシャルの間でも笑わせるようにしてるんですよ」(鶴光さん)

 ほかにもある。

「映画の世界で驚いたのは、最初は助監督や衣装の人まで、僕にはぞんざいで、虫けらみたいに扱うわけ。で、虫けら仲間の大部屋俳優に“あの人たちは何なの?”と聞いたら、スタッフの給料はものすごく安い、と。だから差し入れだけを楽しみにしてるんだと教えてくれてね。だから僕も次からビールを持って行ったら、すぐ態度が変わりましたね。僕は今でも番組の収録のときには差し入れをするようにしています」(同)

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