“そろそろヤクザも限界かな” 「トラック野郎」に菅原文太が出演を決めた秘話 ワンシーンに出演した宇崎竜童は「出演料をもらったのかどうかもよく分かんない」

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「出演料をもらったのかどうかもよく分かんない」

 しばらくすると、東映から電話が。

「何月何日にどこそこへ来てくれって、それだけ。企画書も仮台本もなければ衣装やメイクについても何も言わない。それで聞き返したら“いつもの格好でいい”と。なんかいやな予感がしたね。で、当日出かけた先がガソリンスタンド。そこで初めてセリフについて言われたんです。中島ゆたかさんを乗せた文太さんに向かって“ハクいナオンっすね”ってね。そして桃次郎さんから1万円のチップをもらって、みんなで“ありがとうございます!”と言ったらカット。それで“もう帰っていいよ”って。のべ1時間足らずじゃないでしょうか。だから、出演料をもらったのかどうかもよく分かんないですね」(宇崎氏)

 しかし、「トラック野郎」に対する宇崎の貢献はここから本領発揮となる。

「撮影後しばらくして、文太さんから電話があったんです。“愛川欽也と二人で主題歌を歌えって言われたんで、お前作ってくんねえかな”と。もちろん“はい、作ります”と申し上げました。文太さんは“お前たちがやってるようなブギウギとかロックンロールとか、そういうのは俺たちダメだからな。ま、演歌な”って」(同)

様子がおかしいので「元気ないんですけど?」と聞くと

 映画の内容もよく分からないまま、作詞家で妻の阿木燿子と作り上げたのが、やがてトラック野郎たちの愛唱歌となる「一番星ブルース」だ。宇崎はレコーディングにも立ち会っていた。

「夜11時ごろから始まったのですが、二人ともものすごく情けない感じなんですよ。勢いがない。おかしいなと思って“元気ないんですけど?”と聞いたら、文太さんが“実は腹が減ってるんだ”。当時はコンビニなんかないので、知り合いの料理屋に“握り飯でもなんでもいいから作ってくれ”とお願いしました」(宇崎氏)

 気を取り直して再開するも、次なる困難が立ちはだかる。

「愛川さんの歌い方が気になってしょうがなかったんですよ。もうちょっと違うニュアンスで、とお願いしても、すぐいつもの愛川欽也になっちゃってね。“ああああ~”というところは、哀愁を感じて歌ってほしいという気持ちがあったんですけどね。ただ、何本かシリーズを観ていくうちに、これは“やもめのジョナサン”のキャラクターで歌ってらっしゃるんだと受け止めたら、納得できるようになりました」(同)

 後編【「デコトラが警察に目をつけられ、逮捕者も…」 大ヒットした「トラック野郎」終焉の理由とは 「興行的にも下火になり“もういいんじゃないか”と」】では、大人気シリーズだった「トラック野郎」終焉(しゅうえん)の理由について詳しく報じる。

週刊新潮 2025年8月28日号掲載

特集「『宇崎竜童』『あべ静江』『笑福亭鶴光』が明かす 映画『トラック野郎』50周年“撮影秘話”」より

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