おじさんが「ラブブ」をカバンにつけて起きたこと 電車で盗撮、”ラブブ狩り”に怯え…日本も浮かれていられない

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「半年カバンにつけてくれるなら譲る」と言うと…

 店内にお目当てのラブブは無かったものの、10種類以上のキャラクターが並んでいた。日本のように1つのキャラクターをじっくり育てるというよりは、複数のキャラクターを並べ、SNSで火がついたものを徹底的に売り込んでいくという戦略のように見える(ひょっとすると、冬にはスカルパンダが人気になってる可能性も!?)。

 この夏に一挙に人気になったラブブだが、みんな一様に言うのは「最初はそこまで可愛いと思わなかったが、手に入りにくさと、入手後にカバンにつけているうちに愛着が湧いてきて可愛く見えるようになった」ということだ。

 筆者が持つラブブを譲ってほしいと言う女性に「半年カバンにつけてくれるなら譲る」と返すと、「それなら要らない」と答えられることもある。このやりとりからも、多様性の時代においてキャラクター人気の寿命はますます短くなっていくのかもしれない。

タイでは一足早く

 ラブブ熱はまさにピークを迎えつつあるのだろうか。知り合いの女性は、家族旅行でタイのバンコクを訪れた時にもPOPMARTに立ち寄り、ラブブを探したらしい。バンコクのPOPMARTは、ラブブの入荷があるかは別として5分で入店できるそうだ。8月8日にオープンした世界最大のPOPMARTアイコンサイアム店でも、オープンから30分ほどで入店できたと言っていた。

 そう聞くと、日本とは熱狂の差を感じるが、バンコクでは路上や市場で偽物が本物と同じような価格で売られていたり、「転売用自販機」があり、定価の4倍で売っていたりするそうで、一定の熱狂は継続しているようだ。さらにタイ限定のラブブもあり、今後はそれぞれの「ご当地ラブブ」が人気になっていくのかもしれない。

 ロイター通信によれば、POPMARTの上期売上は約2,800億円に達し、そのうちラブブを含む「モンスターシリーズ」が約990億円を占めた。ラブブ人気により、同社の純利益は前年の約5倍に急増しているという。

日本もうかうかしていられない?

 SNSによって人気が出た今回のラブブ。そこで気になるのは「日本」への影響である。

 思えば、日本のメイクコスメ文化はSNSを通じて韓流に移行していった。現在はサンリオの株価が過去最高を更新しているものの、今後は中国な他国から生まれたキャラクターがライバルとなってくることが予想される。

 先に紹介したタイも、ドラえもん、クレヨンしんちゃんといった日本アニメが広く親しまれている一方で、若者たちの視線はPOPMARTに向けられている。ゲームやアニメ発のキャラクターはまだ日本に優位性があると思われるものの、キャラクターIPビジネスの世界的覇権競争が、ラブブをきっかけに幕を開けたのかもしれない。日本のIPビジネスは、先行優位性を活かして、世界で勝負し続けて欲しいと思う。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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