加藤ローサの離婚はなぜ共感と怒りの炎を巻き起こすのか 「モラハラ臭」を敏感に嗅ぎつける令和の女性たち
ドラマでも大人気 SNS時代のヒットコンテンツとなった「モラハラ夫」
昔は「家庭の問題は外に出すな」が常識だったが、SNSやYouTubeなどで個人が自由に声を発信できる時代になった今、「モラハラされている私」の経験談が誰でも共有できるようになった。誰かが「うちの夫、こんなこと言ってくるんです」と口火を切れば、それが「うちも!」「私も同じだった」と連鎖する。語ることで癒やされ、また共感を呼ぶ。今のネット文化と非常に相性がいいのである。実際、インフルエンサーの中には「夫のモラハラから逃げたシンママ生活」といったテーマで多くの共感を得ている人もいる。男尊女卑的な感覚のままの九州男性たちをこき下ろす「さす九(さすが九州)」というハッシュタグも大きな注目を集めた。
さらに「モラハラ夫」を扱ったコンテンツも大ブームである。2024年以降、「極限夫婦」(関西テレビ)、「わたしの宝物」(フジテレビ)や「夫よ、死んでくれないか」(テレビ東京)など、モラハラ夫の登場するドラマは女性視聴者を中心に話題をさらった。さらに視聴者だけでなく、俳優界にも新たな風潮が生まれたようだ。「モラハラ夫」の演技がうま過ぎる俳優たちには大いに注目が集まるのである。
「夫よ~」での塚本高史さんや、「わたしの宝物」での田中圭さん、「夫を社会的に抹殺する5つの方法」(テレビ東京)の野村周平さんなど。さかのぼればDV気質の恋人を演じた「ラスト・フレンズ」の錦戸亮さんや、妻への愛が狂気じみていく夫を演じた「あなたのことはそれほど」(フジテレビ)での東出昌大さんなど、顔の良さが先行で演技はいまひとつといわれていたのが、クズ男という当たり役をつかんで活躍の幅を広げた俳優は多い。逆にいえば、爽やかな見た目だからこそ、内面のクズさが際立つという強みになっているのかもしれない。
こうしてさまざまな理由から、モラハラ夫は「社会的に許されない存在」として可視化されつつある。そして、それを「言葉にしていい」「誰かに伝えていい」という空気が確実に広がっている。
加藤さんの離婚が注目されたのも、単なる芸能ニュースというより、「見た目も家庭もあんなに完璧そうな女性ですら、モラハラで苦しんでいたのかもしれない」というリアリティーが、多くの女性たちの共感を呼んだからなのだろう。
もちろん、モラハラかどうかはケースバイケースであり、夫婦間の事情は外からすべてが分かるわけではない。だが、「これはおかしい」と声を上げられる環境が整ってきたことは、確実に前進である。そしてその声が、多くの人にとって「私だけじゃなかった」と思える救いになっている限り、モラハラ夫という存在は、今後も「語るべきテーマ」であり続けるだろう。




