福山雅治が守り続けた「下ネタ好きの明るいあんちゃん」キャラに見え隠れする葛藤 “男ウケ”を狙ったキャラは時代遅れに
フジテレビ問題を巡って第三者委員会から「不適切な会合」と認定された懇親会に参加していた件で謝罪した福山雅治(56)。これまで支持されてきた「イケメンなのに下ネタが好き」というキャラクターが通用しなくなった背景とは……。【冨士海ネコ/ライター】
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フジテレビの会合で不適切な発言があったとして、謝罪にまで至った福山雅治さん。高身長に甘いマスクという完璧なルックスで知られる一方、ラジオでは下ネタ好きの三枚目キャラでリスナーを笑わせてきただけに、「何を今さら」と思った人も多かったことだろう。
月9ドラマの主演、紅白のトリを務める歌手。俳優として、アーティストとして、福山さんは常に第一線を走り続けるカッコいいタレントであり続けてきた。一方で彼の「下ネタ好き」は、ファン以外にもよく知られてきた一面である。深夜ラジオ「福山雅治のオールナイトニッポン」で披露される、時に下品で、でもどこか憎めない、おちゃらけた語り口。この見た目を裏切るギャップが、女性ファンだけでなく多くの男性リスナーを引きつけ、彼の人気を不動のものにしたのは間違いない。
この「おちゃらけ」の背景には、インターネット上で頻繁に使われる「ただしイケメンに限る」というミームの存在が深く関係しているように思える。「イケメンがやれば何をしても許される」「不作法すらカッコよさに変わる」といった、ルックスがもたらす理不尽な優位性を揶揄するこの言葉は、同時に「イケメン」に対する世間の冷めた視線を象徴している。
つまり、顔が良ければ得をする一方で、少しでも規範から外れたことをすれば、「結局イケメンだからって調子に乗ってるのか」と厳しく突き放されるという逆説的な呪縛でもあるのだ。福山さんはまさにその呪縛に長くとらわれてきた一人だったのではないだろうか。
福山さんが持ち味としてきた「下ネタ好き」の語り口は、実は女性ファンへのサービスというより、同性へのアピールの意味合いが強かったように思う。「オレはイケメンだけど、決してスカしてはいませんよ」と伝えるための演出。それは時に過剰適応ともいえるほど徹底していた。
その背景には「イケメンだから許されている」と冷笑されることへの強い恐れがあったはずだ。もし一般的な規範から外れる発言をしても、女性ファンが過剰に擁護してしまえば、世間や男性ファンからは「やっぱり“ただしイケメンに限る”、か」と突き放されてしまう。福山さんは、その事態を誰よりも恐れていたに違いない。
堂々たる見た目や明るいノリのキャラとは裏腹に、実は真面目で臆病な人だったのだろう。「イケメンなのに三枚目」という“愛される福山”像を、長年必死に守り続けてきた。それはある種の演技であり、また彼自身を守る防御にもなる。「顔だけのお飾りシンガー」ではなく、作詞作曲やギター演奏を通じて真価を示したいというプライドも、その臆病さと表裏一体にあったのではないだろうか。
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