「田中将大」が“V字回復”した理由 「伝家の宝刀」スプリットを劇的改善 200勝をアシストする「阿部」ではない“名監督”とは
再昇格後の防御率は1.15
そして迎えた新天地での1年目。オープン戦で防御率1.50と結果を残し、開幕ローテーション入りを果たすと、移籍初登板の中日戦(4月3日)で5回1失点の好投を見せ、幸先よく通算198勝目をつかみ取った。
ところが、その後は間隔を空けて臨んだDeNA戦(4月17日)、広島戦(5月1日)で連続ノックアウト。2試合合計9失点の滅多打ちを食らった。
その後は、二軍で打ち込まれる試合も多かったが、徐々に調子を取り戻し、8月上旬についに一軍再昇格。ここまで3試合すべてで5回を投げ切るなど、安定した投球を披露している。
防御率は春先の3試合で9.00だったが、復帰後の3試合は防御率1.15とV字回復に成功。防御率以外にも奪三振率が3.60から6.89へ、与四球率は6.30から2.87へ制球力も改善している。もちろん全盛期の頃の姿とは言えないが、数年前の楽天時代の感覚を取り戻しつつある。
高橋尚成氏も田中将のストレートを絶賛
特に前回のヤクルト戦(8月21日)は、試合後に「全体的に直球の状態が良かったので、ストレートで押していくことができた」と本人がコメントしたように、ストレートに確かな自信を感じた様子。ストレートの球速自体は春先と変わらないが、数字以上に打者の手元で伸びている印象がある。
巨人OBで元メジャーリーガーの高橋尚成氏も自身のYouTubeチャンネル『高橋尚成のHISAちゃん』で、田中のコーナーを突く丁寧な投球を褒めたたえつつ、「春先よりストレートの球の質がすごく良くなっている」と絶賛。高橋氏と同様の感想を述べた評論家も少なくなかった。
奇しくもそれを証明しているのが、復帰後3試合における伝家の宝刀スプリットだ。田中将は春先の3試合において、スプリットでほとんど空振りを奪えていなかった。実際にその3試合で相手打者がスイングした24球のうち空振りは3回だけ。空振り率にして、わずか13%だった。
ところが、再昇格後の直近3試合はこれが大きく上昇。35回のスイングで10回の空振りを奪っている。空振り率は29%なので、春先の2倍以上に増えている。
ではいかにして田中将はスプリットの改善に成功したのか。そのヒントが桑田真澄二軍監督の発言から読み取れる。
スポーツ報知によると、7月2日のイースタン・ヤクルト戦に登板した田中将の投球について、桑田二軍監督は「スプリット以外のボールは良かったなという評価をしています」とコメント。「もう一個半ぐらいボールがパッと落ちれば、ゴロとか空振りが取れると思う」と指摘していた。
その4週間後、田中将は同月30日のイースタン・ヤクルト戦に再び先発。一軍に再昇格前の最後の登板となったこの試合で、5回1失点の好投を見せた。
日刊スポーツによると、桑田二軍監督は試合後、「時々伸びる感じのようなスプリットがあるから、(課題は)スプリットだけじゃないかな。あれが思うように落ちたらもっと簡単に(空振りを)とれると思う。そこだけじゃないですかね」と田中将の課題が解消しきれていないことに言及しつつも、改善点が1つの球種に絞れていることは明らかだった。
結果的に二軍での調整中に桑田二軍監督と二人三脚でスプリットの改善に取り込み、その成果が一軍で出始めたといえるのではないか。田中将にとってストレートとスプリットのコンビネーションはまさに生命線。それが大きく改善しているとなれば、一時は雲行きが怪しかった200勝の達成どころか、先発ローテーションを担う戦力としても重要な役割を期待できるかもしれない。
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