今季9勝の「新エース」を登録抹消…巨人・阿部監督“意味深な采配”の理由とは 短期決戦の怖さを知る指揮官の胸中

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CSで必ず起きる議論

 阪神の独走状態に拍車がかかった。8月22日からのヤクルト戦は、2勝1分けでマジックを「16」まで減らした。

「うまくいけば、9月初旬には胴上げとなりそうです。8月15日からの2位巨人との3連戦を勝ち越した時点で、球団内の優勝ムードも高まってきました。藤川球児監督(45)は、マジックが順調に減っていることを質問しても、あまり多くを語ってはくれませんが」(在阪記者)

 優勝カウントダウンと同時に再燃してきたのが、クライマックスシリーズ(以下=CS)への疑問だ。

 ペナントレース優勝チームにはCSファイナルステージにおいて「アドバンテージ1」が与えられる。しかし、目下のところ、2位巨人、3位DeNAが勝率5割ラインを行き来しており、1勝分のアドバンテージでは「ペナントレース優勝の価値が問われる」というのだ。

 野球ファンの間でもよく議論になるテーマだが、リーグ優勝したチームが必ず日本シリーズに進出できるわけではない……ということへの違和感は、パ・リーグがCS制を導入した04年当時から指摘されてきた。

 セ・リーグのCSは07年から始まり、優勝チームがCSファイナルステージで沈んだのは4例。このうち巨人は07年、14年に続き、昨季も3位DeNAに破れ、シリーズ進出を逃がしている。

「今年1月に開かれた12球団監督会議でも、CSのアドバンテージ1について、是か非かの意見交換がされました」(スポーツ紙記者)

 この件について、全監督に発言を求めたわけではないが、大方の意見は「アドバンテージを増やすことも検討」というものだった。しかし、阿部慎之助監督(46)の提案はより踏み込んだものだった。

ステージ間の日程を詰めると

 阿部監督の改革案は、優勝チームには不利になる“実体験”も込められていたようだ。

「CSをめぐる意見交換では、阿部監督が最後に発言したと記憶しています。というか、阿部監督の意見が的確すぎて、他の監督たちは何も言えなくなってしまったような雰囲気でした」(NPB関係者)

 阿部監督は少し早口に、こう発言したそうだ。

「優勝したチームはポカンと(日程が)空いてしまうんですよね。宮崎(フェニックス・リーグ)に行かせたが、その分、選手がケガをするリスクも上がるし」

 昨季のセ・リーグは大混戦となり、巨人が優勝を決めたのは141試合目の9月28日だった。翌29日もゲームが組まれていたが、セ、パの全日程が終了したのは10月9日。10月12日にCSファーストステージが始まり、同ファイナルステージを迎えたのは10月16日。つまり、巨人は2週間以上も待たされたわけだ。

 こうした日程を指して阿部監督は、「日程を詰めることで、それもアドバンテージになる」とし、CSファーストステージ終了の翌日から同ファイナルステージを始めるのも一案では、と訴えた。

 CSファーストステージは3戦2勝制。昨季は2位阪神と3位DeNAが、ファイナルステージ進出を争った。セ・リーグは2戦で決着が着き、パ・リーグは第3戦までもつれた。セ・リーグは中2日、パ・リーグは中1日でファイナルステージを迎えた。ファーストステージの初戦はエース投手を投入するのが一般的だが、阿部監督の言うファーストステージ終了の翌日がファイナルステージ初戦となれば、確かにエース投手の登板日が変わってくる。

 ファーストステージが3戦までもつれた場合は、中4日でも同ファイナルステージ第2戦、ファーストステージが2戦で決着が着いたら、ファイナルステージ第3戦まで投げられない。ファイナルステージは6戦4勝制だ。優勝チームがCSファイナルステージを連勝したら、1勝分に相当する「アドバンテージ1」を持っているので、CSファーストステージを勝ち上がったチームからすれば、エースの第3戦先発は“最後の砦”となる。これもファンの興味を惹くのではないだろうか。

 もっとも、阿部監督は「実際は雨もあるし、現実的には厳しいかなとは思うけど」とも話していたが、他球団の監督たちはただ頷くだけしかできなかったそうだ。

「昨季のCSファイナルステージ初戦、阿部監督はエースの戸郷翔征(25)を立てましたが、実戦から遠ざかっていたせいでボールが走っていませんでした。初戦を落とし、アドバンテージ1はなくなってしまいました。戸郷は第6戦でも先発、4回まで無失点でしたが、後続が打たれ、巨人が破れています」(前出・スポーツ紙記者)

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