今年の高校生ドラフト候補は「大不作」も…“隠れ有望株”五人衆がドラフト戦線に浮上していた!

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 夏の甲子園は8月23日に決勝戦が行われ、沖縄尚学の初優勝で熱戦の幕を閉じた。連日の猛暑のなか、大会を終えられた関係者に改めて敬意を表したい。しかしながら、ドラフト候補の観点から見ると、残念ながら「今大会は大不作だった」と言わざるを得ない。筆者は、デイリー新潮で8月16日配信された寄稿記事のなかで、スカウト陣の不作を嘆く声を紹介した。しかし、この話には続きがある――。【西尾典文/野球ライター】

フォームに欠点らしい欠点がない

「我々スカウトが現場を回るのに一番忙しい時期は、夏の甲子園の前に行われる地方大会です。夏の大会は、負けたら終わりなので、視察のスケジュールを組むのも難しい。しかし、今年はドラフト対象選手が明らかに少なかったのです。(他の年ではあまりやらない)地方大会で同じ選手をもう一度見に行くこともありました。それだけ、プロ志望の有力選手が少なかったですね」(夏の甲子園を視察したセ・リーグ球団スカウト)

 スカウト陣がどのように高校野球の視察に動くのか、改めて説明したい。夏の甲子園より地方大会に重きを置いていることは少なくなく、甲子園も全出場校が一通り登場し終えると、大半のスカウトが聖地を離れてしまう。

 原則として、地方大会と夏の甲子園初戦を総合的に評価して、ドラフト指名を検討していくわけだ(もちろん、例外はある)。

 今年の有力選手は、早い段階で進路を明らかにしていた。たとえば、高校ナンバーワン左腕の高蔵寺のエース・芹沢大地は、社会人志望を公言して愛知大会に臨み、初戦で姿を消した。また、夏の甲子園でも活躍した横浜が誇る強打の外野手である阿部葉太は、早々に大学進学の意向を示しており、スポーツニッポンでは「早大希望」(8月21日配信)とも報じられている。

 プロ志望で上位指名が確実視される選手は、甲子園歴代最速タイの155キロをマークした健大高崎の石垣元気だけと言われている状況だ。

 しかしながら、より詳しく取材を進めると、最終学年で評価を上げてきた“隠れ有望株”は存在していた。

まずは投手から。東海大甲府のエース、鈴木蓮吾と、延岡学園の大型右腕、藤川敦也だ。

 鈴木は、1年生からエースナンバーを背負った左腕。今年の夏の山梨大会は、初戦の日本航空戦に敗れたものの、最速147キロをマークした。また、投球以外のプレーについても、フィールディングなど身のこなしが素晴らしい。

「鈴木はフォームが良いですよ。欠点らしい欠点がない。キャッチボールや遠投で投げている姿を見ると、フォームの素晴らしさに惚れ惚れするほどですね。フォームが悪くないのに、制球力に不安がある点をどう評価するかというところですが、今年の高校生左腕では上位クラスに入るのではないでしょうか。夏の甲子園で評判の左腕も視察しましたけれども、ストレートの球質は、鈴木が上回っていましたよ」(パ・リーグ球団の担当スカウト)

昨秋までは無名の存在だったが

 続いて藤川は、九州の高校球界で早い段階から評判となっていた大型右腕だ。身長184cm、体重90kgという堂々とした体躯。昨秋は右肘を痛めた時期もあったが、今夏の宮崎大会で復調した。

「スピードは下級生の頃から出ていましたが、一度怪我をしたこともあってか、うまく力を抜いて投げられるようになりました。7割くらいの力で投げているように見えても、140キロ台中盤が出ますね。スピードを出そうと思えば、もっと上げられると思いますね。フォームのバランスも良く、コントロールも悪くない。同じ九州出身で、甲子園で投げた神村学園の早瀬朔と比べても、藤川のほうが、余力があるように感じました」(九州地区を担当するセ・リーグ球団スカウト)

 延岡学園は夏の宮崎大会準々決勝の富島戦で敗れたものの、藤川は3試合で17回2/3を投げ、自責点はわずか1、21奪三振という見事な成績を残した。夏の甲子園に出場していれば、もっと注目されていたはずだ。

 一方、野手はどうだろうか。

 現地を取材していて、スカウト陣から名前を聞く機会が多かった選手は、関根学園の捕手、池田栞太と昌平の三塁手、桜井ユウヤ、浦和学院の外野手、垣内凌である。いずれも地方大会で敗退している。

 池田は身長185cm、体重91kgの大型捕手。2.00秒を切れば“強肩”とされるセカンドへの送球タイムは、コンスタントに1.8秒台を記録している。昨秋までは無名の存在だったが、今春から一気にドラフト戦線に浮上してきた。

 池田を追っているパ・リーグ球団スカウトの話。

「高校生捕手のなかで、送球は間違いなくトップクラスです。送球する際のコントロールも安定している。大柄ですが、フットワークがいいですね。それに加えて、洞察力が高く、キャッチャーとしての“視野の広さ”もある。打撃はプロで通用するまでに少し時間がかかると思いますが、体の成長に伴い力がついてきました」

 今年の高校生捕手では、U18侍ジャパン候補の強化合宿に選ばれた学法石川の大栄利哉が高い評価を得ているが、池田も守備面で負けていない。

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