「朝ドラ」ヒロインにまつわる「ホント」と「ウソ」 俳優はなぜ、日本一の「狭き門」に殺到するのか

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次回作も保証

 朝ドラを終えたヒロインには民放の連ドラの主演が用意されていることも多い。「おむすび」(2024年度後期)の橋本環奈(26)は、放送終了から間もない4月からテレビ朝日「天久鷹央の推理カルテ」に登場した。

 伊藤は9月に公開される映画「風のマジム」に主演する。10月公開の同「爆弾」にも出演する。

「ブギウギ」(2023年度後期)の趣里(34)は放送終了の半年後だった2024年10月にフジテレビ「モンスター」に主演した。趣里もオーディション組。2471人の中から選ばれた。

 民放の場合、ヒロインを連ドラに起用する理由はCMのスポンサーと似ている。ヒロインをやるくらいだから実力もあるものの、知名度や好感度の高さにも期待する。

 また、CMが増えると民放の連ドラに起用されやすくなる。日本テレビのドラマが典型例だが、近年はその俳優のCMスポンサーが連ドラのスポンサーにもなるケースが多いからだ。

「舞いあがれ!」(2022年度後期)の福原遥(26)もオーディションで2545人の中から選ばれた。「カムカムエヴリバディ」(2021年度後期)の深津絵里(52)は制作陣の指名だが、上白石萌音(27)と川栄李奈(30)はオーディション。3061人の中から選ばれた。

「エール」(2020年度前期)の主演・窪田正孝(37)は指名だったものの、その妻役の二階堂ふみ(30)は2802人の中から演出された。

 全員、新人ではなかった。実力も人気もあった。それでも露出量など朝ドラの特別性を考えると、ヒロインのオーディションに参加したのはうなずける。

 朝ドラは約2年前までには脚本家が決まる。その後、制作統括と脚本家が方向性を話し合う。その結果に合うヒロインを両者で決めるか、オーディションで選ぶ。

「ヒロインはNHKへの貢献度で決まる」「NHKはヒロイン候補を長く見守っている」「ヒロインの妹役はヒロイン候補」などというのはフィクションである。企画や脚本に合う俳優が選ばれる。当然のことだ。

 また、朝ドラのそれぞれの制作統括は芸術家肌であり、独立心も個性も強いから、ほかの制作者への貢献など気にする様子がない。

 一方で自分が買っている俳優を起用することはよくある。「虎に翼」の制作統括・尾崎裕和氏は、伊藤を単発ドラマ「ももさんと7人のパパゲーノ」(2022年)にチーフプロデュサーとして主演させたのち、ヒロインに抜擢した。

「風、薫る」の制作統括・松園武大氏はやはり制作統括だった「光る君へ」で、見上が豊かな表現力などを発揮したことから、起用を決めた。

 ヒロインを目指すなら、貢献度などを考えるより、優れた制作者に認められるのが近道だ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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