あっという間に人口1億人割れなのに… 日本に新たな「住宅」「高速道路」「新幹線」は必要なのか
日本の人口は20年以内に1億人を割る
総務省が8月6日に発表した今年1月1日時点の人口動態調査によると、日本人の人口は1億2,065万3,227人で、前年より90万8,574人減少。これは要するに、死亡者数が出生数を上回った数である。減少率は0.75%で、減少数、減少率とも1968年に調査を開始してから最大だった。
それも当然で、厚生労働省によれば、2024年の国内の出生数は68万6,061人で、前年より4万1,227人減少。1899年に統計を取りはじめて以来、初の70万人割れだった。初めて100万人を割ったのが2016年で、それからわずか8年でさらに3割も減ったのだ。日本人の出生数がもっとも多かったのは、第1次ベビーブームだった1949年の269万人超で、その4分の1近くまで減少したことになる。
日本人の出生数が68万人台になるのは、内閣府の国立社会保障・人口問題研究所が一昨年に発表したばかりの将来予測で、2039年とされていた。想定より15年も早いのは、少子化が想像を絶するスピードで進んでいることの証左である。
今年、第1次ベビーブームに生まれた団塊の世代が全員75歳を超えた。社会の高齢化が一段と進んで、医療や介護の需要に供給が追いつかないことが懸念され、「2025年問題」と呼ばれている。さらに今後、この世代で鬼籍に入る人が増えると、人口減少率はさらに高まる。国立社会保障・人口問題研究所は、日本の総人口は2056年に1億人を割ると予測しているが、ここは上記の予測も大きく外しており、かなり甘いのではないか。人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長は、2043年に1億人を割ると試算する。
しかも恐ろしいのは、出生数がピーク時の4分の1なのだから当然だが、人口の絶対数が減ると同時に、社会の担い手の数も確実に減るということである。
高速道路も新幹線も利用者は減る一方なのに
これほど急速に人口が減るのだから、空き家の増え方も勢いを増す。むろん、いま建て続けているマンションも、不人気の物件は空き家率が増すはずで、よほど危機意識をもって対策しないかぎり、避けられないのは全国各地のスラム化である。
住宅だけではない。たとえば、国は高規格幹線道路網1万4,000キロ(高速自動車国道1万1,520キロと一般国道自動車専用道路2,480キロ)の整備を進めている。全国高速道路建設協議会の調べでは、今年7月25日現在、1万2,319キロが完成しているが、逆にいえば1,700キロ近くは今後も建設し続けるということだ。
あるいは新幹線。「整備計画路線」のうち、現在、建設中なのが北海道の新函館北斗~札幌間で、九州・長崎ルートの新鳥栖~武雄温泉間と、北陸の敦賀~新大阪間が未着工となっている。はたして着工すべきなのか。だが、四国や山陰、東九州など「基本計画路線」をかかえる地域は、「地方創生のためには新幹線が必要だ」などと主張し、「基本計画」から「整備計画」へと格上げするように働きかけている。
本当に必要なのか。また、新幹線の建設が「地方創生」につながるのか。
上述したとおり、少子高齢化と人口減少は、予想を超える速度で進んでいる。仮に日本の総人口が十数年後に1億人を割り込み、しかも高齢化率が高くて、社会の担い手の割合が小さくなったとき、高速道路にせよ、新幹線にせよ、リニア中央新幹線にせよ、必要とされるのだろうか。人口減社会を想定せずに整備してきたそれらを、維持できるのだろうか。
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