同世代の「希望」であり「呪い」? 炎上女王・辻希美の「エリート出産」が映す令和女性のリアル
「ベストマザー賞」の呪いもなんのその パワフル過ぎる母は福音か呪いか
「ベストマザー賞」を2013年に受賞している辻ちゃんだが、歴代受賞者の多くがスキャンダルに見舞われることも多い賞でも有名だ。しかし辻ちゃんは確かに炎上タレントではあったが、不倫や金銭トラブルは起こしたことがない。それは「イクメン オブ ザ イヤー」を複数回受賞している夫の杉浦さんも同様である。
さらに辻ちゃんの「母」としての最大の特長は、出産直後から全力で動き出すパワフルさだ。退院早々に三男の友達を招いてもてなす様子がインスタグラムで公開されると、そのエネルギッシュな姿は驚きだけでなく心配の声も集まった。産後これだけ動けるのが当たり前だと思わないでほしいという出産当事者からの悲鳴もあり、議論を絶えさせない。「私たちには無理」という諦めと、「辻ちゃんだからできる」という距離感が、人々の感情を揺さぶってくるのだ。
さらに、第5子の名前「夢空(ゆめあ)」を公開したこともまた世間を二分した。お子さんたちからはキラキラネームを反対されていたという報道もあっただけに、批判の声は少なくない。
しかし辻ちゃんは昔から「人の目を気にしない」スタンスを崩さない人である。その潔さは魅力であり、ある人にとっては、「母になってもこんなに楽しめる」と励ましになる。だが別の人にとっては、「自分には到底まねできない」というプレッシャーになり、同時に炎上の火種にもなる。パワフル過ぎる辻ちゃんの存在は同世代の女性にとって、希望であると同時に呪いになっているのではないだろうか。
SNS全盛時代のいま、「持てる者」がたたかれるのは一般人でも同じ。働く女性として、妻として、母として、頑張れば頑張るほど言われなき批判が飛んでくることもある。しかし辻ちゃんは炎上と隣り合わせで生きてきたが、批判を受けても倒れない。たたかれても翌日にはまた家族の笑顔を発信し、批判と祝福の両方をエネルギーに変えて走り続ける。その強靭さがファンを引きつけ、アンチをも巻き込んで「辻ちゃん劇場」を成立させている。
炎上は、辻ちゃんの宿命であり武器なのだ。かつては常識知らずの若い母として、そしていまや経済力と社会的影響力を備えた「エリート」として、議論を巻き起こすたびに辻ちゃんは「強さ」を証明し、社会に問いを投げかけ続けている。「自分を信じていくのだぴょん」と歌っていた頃から約四半世紀がたってもなお、辻ちゃんのスタンスは変わらない。身長153センチの元アイドルママは、誰よりも大きな存在感で、これからも時代に火をつけ続けていくのだろう。






