岩手県で校舎にクマ侵入 対峙した中学校副校長が“驚愕の瞬間”を語る 「過去にも敷地内に侵入したことが」

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 8月18日の午前8時頃、岩手県滝沢市の中学校の校舎にクマが侵入した。全校生徒は63人だが、当日は夏休み期間中。それでも校内には数人の生徒がいた。副校長が身を挺してクマを追い払い、生徒を守って事なきを得たという。どんな様子だったのか、副校長に話を聞いた。

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 岩手県西部に位置する滝沢市――。東側は隣接する盛岡市のベッドタウンになっているが、北側を接する八幡平市ではクマの出没情報が数多く寄せられている。

 クマが入り込んだ滝沢市立一本木中学校は、東北自動車道・滝沢インターチェンジから車で5分ほどの位置にあり、近くには小学校と高校、大学もある。クマはどうやって入ってきたのか、伊藤伸副校長(53)に聞いた。

「9月9日に駅伝大会が予定されていて、その練習のために2年生と3年生の5~6人が来ていました。そんな中、クマが校舎に侵入したのを見た生徒が職員室に知らせに来たんです。すぐに廊下に出ると、体育館のほうにクマがいました」

 校舎と体育館は渡り廊下でつながっており、そのつなぎ目にある体育館の非常口からクマは入り込んだという。

「体育館は湿気が溜まりやすいため、21日に始業式が行われることもあり、湿気を取り除くために窓を開けて大型扇風機を回し、非常口も開放していたんです。そこから入り込んだようです」

 伊藤副校長は生徒を自身の後ろに隠れさせ、クマと対峙したと報じられている。

「それはちょっとメディアの誇張ですよ。クマに立ち向かったわけではなく、たまたま生徒よりも前に私が出ていただけで、他にも先生がいたんですから。私だってびっくりしていたんですよ」

野生のクマは初めて

 ともあれ、クマは校舎から立ち去った。防犯カメラに映っていたクマは小さめだったが、生徒たちは落ち着いていたように見える。普段からの教育の賜だろうか。

「特別に授業を設けたりはしていませんが、付近で目撃情報もありますし、そうした情報は教師にも伝えています。生徒たちもクマを前にして騒いじゃいけないことはわかっていると思います」

 実際、滝沢市ではクマの目撃情報が増えている。市のホームページによると、今年4月以降の目撃情報は95件。近年で最も目撃数が多かった一昨年は153件だが、この年の8月18日時点では64件なので、今年はそれを上回るペースでクマが目撃されていることになる。

「今年はちょっと多いのかなとは思っていました。実際、学校付近で目撃されたり敷地内に入り込んだりという話は聞いていましたから」

 副校長も何度かクマを見ているのだろうか。

「動物園ならともかく、野生のクマを目の当たりにしたのは今回が初めてでした。だから驚きました」

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