「コンサル」が東大生の就職人気ランキングを席捲 元社員が「実は向いているのはホストみたいな人」と話す納得の理由
最近の東大生は極端な“短距離志向”に?
ただ、「早く」「深く」「何度も」経験したからといって、本当に優秀な人間になれるのかというと、A氏は「微妙ですね」と言う。
「今の若い人たちの中には、倍速再生でドラマや映画を鑑賞する人たちが増えていると聞きますが、そうした“タイパ重視”の延長線上でコンサルが持て囃されているように感じます。“倍速再生”だと、たしかにかける時間が半分になることで、情報量が2倍になっていると言えるかもしれないですが、自分を振り返ってみても、本当に楽しめているのか、それが自分の血肉になっているか、というと甚だ怪しい。ゆっくり歩くからこそ、得られるものもあるわけで。それはコンサルでの現場も同じだと思います。“促成栽培”では得られない経験もあるということです」(A氏)
“タイパ重視”のキャリア形成ばかりに目を向けていると、ゆっくりと長く向き合うことで得られる価値を切り捨ててしまっている恐れがあるとA氏は指摘する。
「最近の、特に高学歴な学生たちは、極端な短距離志向だと感じるんです。でも世の中、長距離走が求められる局面って意外と多いんですよ。腰を据えて、ずっと何かに向き合い続ける体力みたいなものは、短距離走では培われないと思うんですよね」(同)
実際、現場では入社してもすぐに折れてしまう若者が増えてきているようだ。
「優秀な学生がたくさん入ってくるのはいいことなのですが、すぐに辞めてしまったり、辞めないまでもメンタルをやられてしまい社内で“要注意”扱いになったりする若手は多い。どちらかと言うと、真面目なタイプの方がそうなる割合が多く感じますね。理想と現実があまりに違っていたりして、思い詰めてしまうのでしょうね」(同)
コンサルは結局のところ“対人サービス”
では、コンサルに向いているのは、いったいどんなタイプなのだろうか。
「あくまで僕の考えですが、本来は“ホスト”みたいな人がコンサルには向いていると思います。結局、お客さんに信頼されるには、相手が心地よくなるようなコミュニケーションのスキルが重要です。最適解を出すことだけが目的なら、これだけAI全盛の時代に高いお金を出してコンサルを雇う必要はありませんからね」(A氏)
そうしたスキルは、“促成栽培”的な文脈でコンサルに入社する人たちが目指しているものと、少しズレがあるという。
「東大卒の若手社員はもちろん優秀な人が多いですが、“人の気持ちを理解するスキル”が高いかというと、必ずしもそうではありません。エリート意識が強すぎる若者が多いのも気になるところです」(同)
コンサルは結局のところ“対人サービス”なので、プロジェクトにお呼びがかからないと仕事がなくなってしまう。
「コンサル業界で重要な評価基準として、自身の勤務時間のうち、どれぐらいの割合でアサインされているか、という見方があります。人気のある人は色んなプロジェクトから呼ばれる一方、そうでない人はavailable(非稼働)の時間が長くなることから、“あの人アベってるね”などと社内でも後ろ指をさされてしまいます」(同)
エリート意識が強く、ついつい偉そうな態度を取ってしまいがちな東大生の中には、本当は優秀なのに“アベって”いる社員も少なくないそうだ。
コンサル人気は「官僚離れ」の裏返し?
A氏は、コンサル業界が人気になっている要因として「官僚離れ」も一因だと話す。
「かつて東大生の多くが官僚を目指していましたが、“ブラック霞が関”という言葉が出てきたように、官僚は働き方がブラックすぎると忌避されるようになってしまいました。官僚の皆さんのなかには優秀な人が多いのですが、給料はコンサルよりずっと低い。少し前までは我慢していれば、最後は退職金をもらって民間企業に天下りし、役人時代の安い給料を取り戻すこともできましたが、いまはそれもやりにくくなっています」(A氏)
待遇の面でも、かつては霞が関を目指したような層が、給料の高いコンサルを目指す理由になっているという。
「個人的には、霞が関の給料をもっと上げて、もっとホワイト化を進める必要があると思っています。そうしないと、これからも優秀な学生がどんどんコンサル業界に流れ続けることになるでしょうね」(同)
〈【なぜ東大・京大生はコンサルに入りたがるのか 「高年収のカラクリ」や「独特の企業文化」まで…大手コンサル企業の「現役社員」が告白する“光と影”】では、コンサル業界の転職事情、独特のロジカルシンキング文化、過酷な労働環境や終わりの見えない仕事による精神的疲弊、そして急成長を遂げる「総合系」コンサルファームの台頭など、この業界の内側で何が起きているのか、現役社員や元社員に徹底取材を敢行。6000字にわたって当事者の証言を交え詳報している。〉
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