「佐々木朗希」2度目のリハビリ登板は被安打3、与四球3、失点2…“160キロ剛速球が消えた”だけじゃないルーキー時代からの“致命的な弱点”とは
MLBドジャースの佐々木朗希は日本時間の8月21日、3Aコメッツの投手として先発出場した。しかし4回途中で降板と不本意な内容に終わった。3回3分の1を投げ、3被安打で2失点(自責1)。2つの三振を奪ったが、制球に苦しむ場面も目立ち、3つの四球を与えてしまった。球速は最速で157・4キロを記録したが、それでも160キロには届かなかった。NPBでファンを魅了した剛速球はこの日も鳴りを潜めたままだった。
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野球解説者の前田幸長氏はロッテ、中日、巨人の3球団で投手として活躍。先発、中継ぎ、クローザーの全てを経験した。また2008年には渡米してレンジャーズとマイナー契約。3Aレッドホークスで36試合に登板したため、アメリカの野球事情にも詳しい。
佐々木は3Aで2試合を投げた結果、防御率は6・75になった。なぜ佐々木の剛速球は消え去ってしまったのか、前田氏は「僕も経験がありますが、インピンジメント症候群の後遺症に悩まされる投手は少なくありません」と言う。
「とにかく安静にしていると、次第に『ある程度なら投げられる』という状態にまで回復します。しかし投げてみると筋肉や骨、関節などが衝突し、強い痛みを感じるのです。そこで、なるべく痛くない投げ方を模索することになります。微妙な変化なので、大半の人は投球フォームが変わったと分かりません。しかし本人にしてみると、とても100%の力が出せる状態ではないのです。本来であればフォームのメカニズムを徹底的に検証する必要があるのですが、佐々木投手は抜本的な改善に着手できていません。これでは160キロ台の速球が完全復活することは困難でしょう」
速球と制球の関係
前田氏によると、ドジャースの首脳陣は佐々木に対し「【1】球速を160キロ台に戻す」、「【2】制球力を上げる」という2点を同時に要求していると考えられるという。これに「【3】後遺症の痛みに対処する」という佐々木の個人的な課題が加わり、3つの難問が突きつけられているわけだ。
「日米のスポーツメディアが球速の低下を報じていることを、もちろん佐々木投手は把握しているでしょう。試しに全力を出して投げてみると、160キロに達することもあると思います。ただし、全力投球を続けることはインピンジメント症候群の後遺症と制球に不安がよぎるはずです。特に制球と球速の関係で言えば、基本的に速い球ほどブレは大きくなります。球速150キロ台で常に打者を討ち取ることができれば佐々木投手には理想的な投球内容ですが、残念なことにそれだけの投球術を佐々木投手は身につけていません」(同・前田氏)
佐々木はNPBで完全試合を達成し、13者連続奪三振の記録も持っている。世界屈指の投手であるにもかかわらず、なぜかMLBでは調子が出ない──こう首を傾げる野球ファンも少なくないだろう。だが前田氏は「実はルーキー時代から、佐々木投手は致命的な“弱点”を抱えていたはずです」と指摘する。
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