藤浪晋太郎と青柳晃洋は続けるか!? シーズン途中の“緊急補強”でクローズアップされた選手たち

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 球宴明け後、7月末の補強期限までに、元阪神の藤浪晋太郎と青柳晃洋が米球界からDeNA、ヤクルトに入団したほか、巨人も米独立リーグの外野手・乙坂智を獲得するなど、駆け込み補強が相次いだ。首位に大きく離されたチームも、クライマックスシリーズ(CS)進出をかけたシーズン終盤の巻き返しに全力を挙げるなか、彼らがどれだけ貢献できるか注目される。そして、過去にもシーズン後半の緊急補強でクローズアップされた男たちがいた。【久保田龍雄/ライター】

沢村を獲って良かったと思われるように

 まず、巨人では3軍落ちの屈辱を味わうなど、不遇をかこっていたのに、ロッテ移籍後、セットアッパーとして鮮やかに復活を遂げたのが、沢村拓一である。

 コロナ禍でシーズン開幕が3ヵ月遅れた2020年、巨人10年目を迎えた沢村は、登板13試合で防御率6.08と振るわず、7月26日に登録抹消。その後、2軍でも制球に苦しみ、8月11日に3軍降格となった。

 そんな矢先、8月末時点で首位・ソフトバンクを3ゲーム差で追っていたロッテが、リリーフ陣強化のため、沢村獲得に動き、強打の左打者を探していた巨人との思惑が一致、9月7日、香月一也との交換トレードが決まる。

 翌8日、ジャイアンツ球場で阿部慎之助2軍監督らにお別れの挨拶をした沢村は、昼にオンラインでロッテの入団会見を行うと、即日で1軍登録され、日本ハム戦でベンチ入り。3対2とリードの6回に3番手としてマウンドに上がった。

 57番の新ユニホームが間に合わず、急きょ、福島明弘打撃投手の106番のユニホームで登場した沢村は、渡辺諒、大田泰示、ビヤヌエバを3者連続三振に打ち取り、移籍後初ホールドで勝利に貢献。「球場の雰囲気も変わったし、本当に素晴らしい」と井口資仁監督を喜ばせた。

 沢村も「まだ1試合。結果を残したとも思っていない。沢村を獲って良かったと思われるように努力していく」と闘志を新たにし、登板22試合で1セーブ13ホールド、防御率1.71を記録。チームは10月に主力の多くがコロナに感染し、一時は3位転落も、沢村はハーマン、益田直也とともに勝利の方程式“3本の矢”の一人として、11月7日のオリックス戦、8日の西武戦のいずれも8回をゼロに抑え、4年ぶりのCS進出に貢献した。

「救世主」

 楽天ではほとんど出番がなかったのに、補強期限直前の7月に巨人に移籍すると、いきなり先発ローテ入りして4勝を挙げたのが、2010年の朝井秀樹である。

 02年にドラフト1巡目で近鉄入りした朝井は、近鉄とオリックスの合併後、分配ドラフトで楽天に移籍。07年に8勝、08年に9勝を挙げたが、09年以降は出番に恵まれず、翌10年も7月まで1軍登板わずか1試合だった。

 そんな朝井に目をつけたのが、グライシンガー、ゴンザレスらの先発陣が不調に陥った巨人だった。

 7月26日に栂野雅史との交換トレードが決まり、「想像もしなかった」巨人のユニホームを着ることになった朝井は「あの投手陣の中に入って1軍で投げられるのか」と不安に駆られたという。

 だが、8月1日のイースタン、日本ハム戦で6回を2安打無失点に抑えると、1軍合流が決まり、同8日の広島戦で移籍後初先発初登板が実現する。

 この試合で7回を2安打無失点に抑え、見事移籍後初勝利を挙げた朝井は、お立ち台で「本当に夢のようで……。家族にすごいつらい思いをさせた。何とか白星をプレゼントできて良かった」と涙ぐんだ。

 同年は登板10試合中8試合に先発して4勝1敗、防御率2.01で、CS進出に貢献。阪神とのファーストステージ第2戦、中日とのファイナルステージ第3戦でも勝ち投手となり、「救世主」と呼ばれた。本人は「救世主って……。やっぱり変な感じです(笑)。今思うと、巨人に入ってからは勢いで突っ走って、気持ちに余裕が生まれたことは一度もなかった。常に必死にやっていた、そんな感じです」(『日本プロ野球トレードFA大鑑2011」』ベースボールマガジン社)と振り返っている。

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