トランプ政権が“中国を模倣”か 経済分析に難癖、企業からカネを巻き上げ、統計局長はクビ…「国家資本主義」がもたらす米国経済の悪化

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米国経済に景気減速の予兆

 米株式市場は相変わらず好調だ。8月15日のダウ工業株30種平均は一時、昨年12月につけた史上最高値を上回った。

 個人消費も堅調だ。15日に発表された7月の小売売上高(速報値)は前月比0.5%増の約7263億ドル(約107兆円)と2カ月連続で増加した。

 金融市場関係者はトランプ政権の関税政策による景気後退は回避できたと判断しているようだが、実体経済の悪化はこれからだ。個人消費は低所得層を中心に鈍化が目立ち始めており、企業の投資も人工知能(AI)分野に偏っており、盤石とはいえない状況だ。

 2023から24年にかけて、米国経済の成長率は金融引き締めの下でも3%弱と高水準だったが、今年は1%前後に減速する可能性が高まっている。「コロナ禍後の世界経済を牽引してきた米国経済が曲がり角に差しかかっている」(日本経済新聞2025年8月15日付)との見方が一般的だ。

国家資本主義の傾向が強まる米国

 足元の景気減速の予兆以上に気がかりなのは、米国経済が国家資本主義の色彩を帯びてきているとの疑念が生じていることだ。

 国家資本主義とは、国家が企業活動に積極的に介入する経済運営のあり方であり、現在の中国がその典型だと言われている。

 これに対し、米国では企業の自由な活動が保障されているとみなされてきたが、トランプ政権2期目に入り、国家資本主義の傾向が強まっているとの警戒感が広がりつつある。

 トランプ政権は当初から対外的に米国第一主義を掲げ、自由貿易体制を重視しない方針を鮮明にしている。貿易赤字の解消を目的とした高関税政策を進めるとともに、関税を引き下げる見返りに世界各国から米国内への投資を半ば強制する手法は定番となった。

 このことからわかるのは、米国が国家主導の管理貿易体制に舵を切ったことだ。

労働省の労働統計局長をクビに

 トランプ政権はさらに国内でも異例の行動に出ている。

 市場関係者が驚いたのは、トランプ氏が1日に公表された雇用統計を不正操作と決めつけ、労働省の労働統計局長を解任したことだ。

 新たに局長に指名されたアントニ氏の発言も市場の不安を増幅させている。アントニ氏が雇用統計の速報値が大幅に修正される状況が続いていることを問題視し、雇用統計の月次速報を一時停止すべきだと主張していることが明らかになったからだ。

 正確性に問題はあるものの、雇用統計は金融市場関係者が最も重視する経済指標だ。速報値の公表が停止されれば、政府統計に対する信頼性が揺らぐ事態になりかねない。

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