トランプ政権が“中国を模倣”か 経済分析に難癖、企業からカネを巻き上げ、統計局長はクビ…「国家資本主義」がもたらす米国経済の悪化

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ゴールドマンを攻撃、FRBに圧力

 トランプ氏が民間企業の経済分析にケチを付け始めていることも問題だ。

 トランプ氏は12日、関税措置が米国経済に悪影響を及ぼすという予測は「間違っている」として、米金融大手ゴールドマン・サックスを公然と批判。同社のデービッド・ソロモンCEOの経営手腕についても疑問を呈した。

 ゴールドマン・サックスはトランプ氏の難癖に毅然とした態度で臨んでいる。だが、アナリストらが萎縮し、調査結果に手心を加えるのではないかとの危惧が広がっている。

 政府にとって不都合な経済実態を隠蔽するのは中国の常套手段だが、トランプ政権もこれに追随し始めているのではないかと思えてならない。

 トランプ氏が連邦準備理事会(FRB)に圧力をかけ続けていることも看過できない。

 ホワイトハウスは12日、トランプ氏がパウエルFRB議長の提訴を検討していると明らかにした。表向きの理由はFRBが実施している建物改修の過大な費用だが、背景にパウエル氏がトランプ氏の利下げ要求を受け入れない状況があることは間違いない。

 米国も中国と同様、中央銀行の独立性が維持できなくなってしまうのではないかとの不安が頭をよぎる。

政治的圧力で企業からカネを巻き上げる

 極めつけは、上納金のような前近代的な制度が導入され始めていることだ。

 トランプ政権は11日、米半導体大手のエヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイセズが中国向けに販売したAIチップ収入の15%を政府に支払うと発表した。中国向けの輸出が認められることを条件に両社が支払う資金は、米国債務の返済に充当されるという。

 ベッセント財務長官は13日、このスキームの対象が他の分野に拡大する可能性があるとの見解を示した。

 税などの通常の手段ではなく、政治的圧力で企業からカネを巻き上げるやり口は、中国政府が2021年に「共同富裕(格差是正)」の名目で大企業から多額の資金を国庫に納めさせたことを彷彿とさせる。これが横行すれば、米国の企業経営の安定性にとって大きな障害になってしまうだろう。

米国が中国を模倣するという皮肉

 思い起こせば、米国は20年以上にわたって中国の国家資本主義を批判してきた。

 中国が2001年に世界貿易機関(WHO)に加盟した際、米国側は中国が徐々に経済的自由を受け入れると期待したが、その後の推移は真逆だったと言っても過言ではない。

 習近平体制下で強化された中国の国家資本主義は一時、世界的に評価されたが、現在は不動産バブルの崩壊などマイナス面が一気に顕在化している。にもかかわらず、トランプ政権がこれを模倣し始めているのだとしたら、これほどの皮肉はないだろう。

 中国の国家資本主義が巨大な官僚機構を駆使して長年実行されているのに対し、米国ではトランプ氏の独断で急遽始まった点も気になるところだ。

 国家資本主義の色彩を強めるトランプ政権のせいで、米国経済が急速に悪化しないことを祈るばかりだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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