緊急補強の「勝ち組」と「負け組」 巨人&中日は新戦力が十分に機能せず オリ移籍の岩嵜翔は大活躍 球団関係者「中日は惜しいことをした…」

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来季に向けた動きも

 二軍の調整登板で課題の制球難を露呈していた藤浪は、8月17日の中日戦で日本復帰初登板。5回を投げて、被安打5、5奪三振、与四死球1、1失点と好投。中継ぎ陣が追い付かれて勝ち星を逃すも、先発投手の役割は果たしている。ストレートの最速は156キロで、カットボールとスプリットで三振を奪い、持ち味は十分に発揮した。

 対戦した中日は、藤浪の右打者付近に抜けるボールを恐れて、スタメンと全て左打者にするなど対策を講じた。藤浪の荒れ球が、いい意味でも悪い意味でも、相手チームの脅威であることは確かだ。クライマックス・シリーズ進出を確保するためにも、重要なピースになるだろう。

 その一方で、巨人と中日は、緊急補強に動きながら、十分に戦力として機能していない。

 まずは、巨人から。主砲・岡本和真の長期離脱をカバーするため、トレードでソフトバンクから内野手のリチャードを獲得した。しかし、ここまで打率.160、4本塁打、13打点と期待された活躍はできていない。

 また、2021年までDeNAに所属し、翌年からメキシカンリーグや米国の独立リーグ、マリナーズ傘下3Aでプレーした、外野手の乙坂智も、入団テストを経て、巨人の一員に加わった。7月29日には一軍に昇格したが、代打で5打席に出場しただけで、8月16日に一軍登録を抹消されている。

 続いて、中日。6月に西武から金銭トレードで内野手の佐藤龍世を獲得。7月には、メジャー通算42本塁打の内野手、チェイビス(元レッドソックスなど)を補強して、打線の強化を図るも、ともに打率が低迷している。冒頭で触れた岩嵜がオリックスで活躍している点を考慮すれば、マイナス面が気になる。

「メジャーは優勝争いが難しくなると、実績のある主力を放出して大胆に若手に切り替える球団が多いです。ただ、日本のプロ野球では、クライマックス。シリーズがあるので、6チーム中3位に入れば日本一の可能性がありますから、そこまで思い切れる球団はありません。また、外国人選手についても、年々、力がある選手の獲得が難しくなっています。それを考えると、オフの間にしっかり戦力を整えて、『シーズン中は動かなくても大丈夫』という形にしておくのが理想ではないでしょうか」(ある球団の編成担当者)

 シーズンも残りわずかになり、スカウト陣や編成担当によると、水面下では来季に向けた動きも出ているようだ。どの球団がどんな動きを見せるのか。その動向に引き続き注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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