緊急補強の「勝ち組」と「負け組」 巨人&中日は新戦力が十分に機能せず オリ移籍の岩嵜翔は大活躍 球団関係者「中日は惜しいことをした…」
いよいよ佳境を迎えるプロ野球のペナントレース。7月31日で補強が可能な期間は終わり、今シーズンは現在の戦力で戦うことになるが、ギリギリまで補強に動いていた球団は少なくない。シーズン開幕後の“緊急補強”が機能している「勝ち組」の球団はどこなのか。そして「負け組」は…!?(成績は8月17日終了時点)。【西尾典文/野球ライター】
【絶好調】楽天が今年5月に獲得したゴンザレス外野手が適時打を放った瞬間
衰えるどころかさらに進化
トレードでここまで最も大きな戦力となっているのが、オリックスが中日から獲得した右腕の岩嵜翔だ。
2021年オフにフリー・エージェント(FA)で移籍した又吉克樹の人的補償で、ソフトバンクから中日へ移籍した岩嵜。翌年には右肘を故障して、トミー・ジョン手術などを受けて長期離脱となったが、2024年は2年ぶりに一軍復帰を果たしていた。翌年は、4月1日の巨人戦でリリーフで登板して、ソフトバンク時代以来、1413日ぶりの白星を挙げて、ヒーローインタビューで声を詰まらせた。
5月30日にオリックスへの金銭トレードが発表されると、6月7日に一軍に昇格した。岩嵜は、中継ぎ陣の一角に定着し、ここまで23試合に登板して3勝、9ホールド、防御率1.64と見事な成績を残している。
今年10月で36歳となるが、8月7日の楽天戦では自己最速を更新する160キロをマークするなど、衰えるどころかさらに進化している。
岩嵜の活躍について、古巣・中日の球団関係者はこう話してくれた。
「人的補償で移籍して、チームやファンに期待されながら、いきなりトミー・ジョン手術ですから、本人はかなり苦しい心境だったと思います。ベテランになってから怪我で長期離脱すると、気持ちが切れてしまうことも多いですけど、岩嵜は違った。熱心にリハビリやトレーニングに取り組んでおり、それが今の活躍に繋がっているのではないでしょうか。中日は惜しいことをしましたね……」
オリックスは、開幕前から中継ぎ陣の故障者が続出しており、その穴を埋める投手が必要だった。岩嵜の加入は、大きなプラスとなったことは間違いない。
クライマックス・シリーズ争いでキーマンになるだろう。
貴重な得点源
パ・リーグでは、楽天も「勝ち組」だ。5月に獲得した外野手、ゴンザレス(元ガーディアンスなど)と6月に加入した内野手、ボイト(元ヤンキースなど)の両新外国人が活躍した
ゴンザレスは、2022年のガーディアンス時代にメジャーで107安打、11本塁打をマークした実績を持っている。6月10日に一軍に昇格すると、12日の中日戦で初本塁打を放ったほか、14日の阪神戦から7月2日のロッテ戦まで12試合連続安打を記録した。7月以降は少し成績を落としているとはいえ、27歳と若く、今後の成長も期待できる。
ボイトはヤンキース時代、コロナ禍で行われた2020年(60試合の短縮シーズン)に、56試合に出場して、22本塁打を放ち、アメリカン・リーグのホームラン王に輝いたスラッガーだ。
その後、昨年からメキシカンリーグでプレーしていた。そこでの成績が評価されて、楽天に加わった。7月2日に一軍昇格すると、デビュー戦のロッテ戦で「6番DH」でスタメン出場。3打席目でレストスタンドに叩き込むなど、3安打、1本塁打、2打点の活躍を見せた。
7月下旬からは少し成績を落としているものの、ここまで30試合に出場して5本塁打、15打点を記録して、長打力を発揮している。
大差をつけられていた3位のオリックスとは、8月17日終了時点で3ゲーム差に迫っており、Aクラスを射程圏内に捉えた。ゴンザレスとボイトの活躍次第で、クライマックス・シリーズへの進出なるか。
セ・リーグは、DeNAが7月に駆け込みで補強を断行した。元阪神のエースで、マリナーズ傘下3Aの自由契約にあった藤浪晋太郎と、元中日の主砲で、今季はメキシカンリーグでプレーしていた内野手のビシエドを獲得している。
昨季まで9年間中日でプレーしたビシエドは、7月29日に一軍登録されると、代打での起用を経て、8月2日の巨人戦で「6番1塁」で初スタメン。2本のツーベースで1打点を挙げるなど、チームの勝利に貢献した。さらに、17日の古巣・中日戦では、移籍後初ホームランを含む3安打、1打点と大暴れ。
ここまでスタメン出場した5試合全てでヒットを放っており、8安打中、4本が長打だ。主砲のオースティンがまだ本調子に戻っていないなか、ビシエドには、今後も貴重な得点源として期待がかかる。
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