「豊田自動織機の非公開化に大義はあるか」 企業防衛のプロが明かす、上場廃止で“本当に得をする人”の正体
豊田自動織機の大型案件をはじめ、上場企業の非公開化に関するニュースが話題になる昨今である。「上場廃止によって長期的な成長を描く」といえば聞こえはいいものの、果たしてそれほど単純な話なのか。実はそこには、「アクティビストに食われるリスク」がいくつも潜在し、企業側がいいように扱われているケースが多々あるのだという。企業防衛のプロが明かす、その驚きの手口とは。(鈴木賢一郎/IBコンサルティング代表取締役社長、『株式投資の基本はアクティビストに学べ プロの投資に便乗する「コバンザメ投資」の始め方・儲け方』著者)
***
『短期的な業績悪化の懸念にとらわれず長期的な視点で成長を実現していくことが当社の企業価値向上、ひいてはトヨタグループ全体の価値向上に資すると考え、当社において非公開化を検討すべきとの判断に至った』
これは2025年6月3日に豊田自動織機が公表した非公開化の理由を要約したものです。さらに端的にいうと、「長期的視点での経営を実現し企業価値を向上させるため」ということです。
私はこれを読んだ際、非常に強い違和感を持つとともに「トヨタグループであってもこういう理由しか書けないのだな。やはり非公開化には大義名分などないのだ」と確信しました。
※出典:トヨタ不動産株式会社による当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する賛同及び応募中立の意見表明のお知らせ(2025 年6月3日/株式会社豊田自動織機)
https://www.toyota-shokki.co.jp/news/item/20250603_document04.pdf
非公開化しないと長期的な成長は描けないのか
「長期的な視点にたった経営をするため」「抜本的な経営改革をするため」
会社によって多少の差異はあれども、非公開化の理由として挙げられるのはどこの会社も同じような内容です。
そもそも長期的な視点にたった経営や抜本的な経営改革というのは非公開化をしないとできないのでしょうか?
私が知る限り、短期的視点で今日明日の利益しか考えずに経営している上場会社など皆無であり、すべての上場会社が長期的視点に立った経営をしているはずです。非公開化しないと長期的視点にたった経営や抜本的経営改革ができないのであれば、上場会社はすべて非公開化したほうがよいという話になってしまいます。トヨタグループにいたっては豊田自動織機だけではなく、むしろグループの中核であり最も長期的視点にたった経営が必要なトヨタ自動車こそが非公開化すべきではないか、ということになってしまいます。
[1/2ページ]


