「豊田自動織機の非公開化に大義はあるか」 企業防衛のプロが明かす、上場廃止で“本当に得をする人”の正体

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非公開化で得をするのは

 トヨタグループはよく「なぜを5回繰り返す」と言われています。おそらく豊田自動織機の非公開化を検討する際にも「なぜ非公開化が必要なのか」を徹底的に深掘りしたことでしょう。

 しかし私は「『なぜ』を確認する相手が本当に正しかったのか」と言いたいのです。

 非公開化の必要性について繰り返し尋ねた相手は、豊田自動織機が非公開化したら莫大なアドバイザリーフィーというお金を手にすることができる、証券会社やプライベートエクイティファンドの人たちばかりだったことはないでしょうか?

 その人たちがトヨタグループに「今やアクティビストの活動が活発化しているし、セブン&アイHDでも敵対的買収のターゲットになる時代です。多額のトヨタ自動車株を持つ豊田自動織機などアクティビストの格好の餌食です。時価総額が5兆円を超えるセブン&アイHDですら非公開化を検討する時代なのです」と囁いていたとしたら?しかもトヨタグループがアドバイスを求めた5人全員がそう答えたとしたら?

「豊田自動織機を非公開化させるべきか」という問答を5回繰り返し、5回とも「非公開化すべきだ」という結論に至ってしまったら、当然、非公開化を選択してしまうでしょう。トヨタグループがすべきだったのは「みんな豊田自動織機を非公開化すべきだと言うけれども、非公開化すべきではないと考える人はいないのか」という質問だったのではないでしょうか?

〈有料版の記事【「その“非公開化”、本当に必要?」豊田織機さえも見落としている上場廃止の罠とは 企業防衛のプロが明かす「アクティビストの手口」と会社を守る「本当の方法」】では、非公開化を決断した東芝や、その他企業の事例を交えながら、非公開化がもたらす弊害、アクティビスト対策の真髄などについて詳述している〉

鈴木賢一郎(すずき けんいちろう)
1997年野村證券入社。引受審査部、IBコンサルティング部などを経て、2016年に独立し株式会社IBコンサルティングを創業。野村證券時代から買収防衛を得意とし、ドン・キホーテによるオリジン東秀の買収、スティール・パートナーズによるブルドックソースの買収案件などで「防衛」に導いている。現在は、平時における企業防衛体制の構築や、有事における企業防衛戦略の実行、IR戦略、アクティビスト対応など、経営にまつわるコンサルティング業務に従事。著作に『敵対的M&A防衛マニュアル』(中央経済社)、『株主総会判断型の買収防衛策』(旬刊商事法務No.1752)など(両者とも共著)。最新刊は『株式投資の基本はアクティビストに学べ プロの投資に便乗する「コバンザメ投資」の始め方・儲け方』(朝日新聞出版)。

デイリー新潮編集部

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