防衛省が自衛隊「観閲式」の中止を発表…「軍靴の音が遠ざかった」との声に専門家は「とんでもない。むしろ“軍靴の音が聞こえる”時代に突入したと肝に銘じるべき」

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アメリカ軍も本気

「今の自衛隊では3年に1回の負担でも厳しいのです。特に尖閣防衛は陸海空の3自衛隊が総力を結集する必要があります。作戦の研究、立案、訓練とやるべきことが山積しています。さらに陸自はドローン戦争という難問にも直面しています。ウクライナ戦争の戦訓をどう取り入れるのか、これは答えが簡単に出る問いではありません。海自は護衛艦『いずも』と『かが』の空母化が大きな負担です。艦載機のF-35Bは海自ではなく空自が運用するという珍しい方式を採用したため、両自衛隊は意思疎通を入念に行い、訓練を重ねる必要があります。その空自は中国軍機の領空侵犯に悩まされており、度重なるスクランブル発進で現場は疲弊しています」(同・軍事ジャーナリスト)

 中国が本気で台湾や尖閣諸島を攻略するはずがない──こう指摘する専門家や識者も決して少なくない。だが自衛隊だけでなく、アメリカ軍も強い危機感を抱いて人民解放軍と対峙しているという。

「6月に中国空母2隻が行った演習は、グアムから伊豆諸島を結ぶ『第2列島線』を初めて超えたことでも注目を集めました。この際、アメリカのステルス駆逐艦『マイケル・モンスーア』が演習を監視していたのではないかと見られています。7月にアメリカ海軍の横須賀基地に入港しましたが、最も目立つ場所に錨を降ろしたことに専門家の注目が集まりました。『どんな演習を行ったか、しっかり見ていたぞ』と中国に暗黙のメッセージを送った可能性があるためです。さらに沖縄の嘉手納基地でも、戦闘機にミサイルなどの武器を搭載する作業を非常に見えやすい場所で行っています。これも中国を牽制する意図があると考えられています」(同・軍事ジャーナリスト)

“軍靴の音が聞こえる”時代

 自衛隊の観閲式は長らく、「軍国主義の復活が懸念される」、「軍靴の音が聞こえる」などと左派陣営を中心に批判されてきた。では今回、観閲式が中止になったことで日本は平和に近づいたのだろうか。

「事実は逆というのは非常に興味深いと思います。むしろ日本の軍事的危機が高まると観閲式を行う余裕は失われるのです。観閲式を行っていた時のほうが平和だったと言えます。例えば海上自衛隊が行っていた観艦式は一般にも公開されていました。入場者は護衛艦の中に入ることも可能で、“軍事機密”なんて言葉は存在しないかのような、非常にオープンな雰囲気に驚いた方も多かったのです。いずれにしても、アメリカ軍も自衛隊も本気で中国解放軍と対峙しています。むしろ今こそが『軍靴の音が聞こえてくる』時代になった、と肝に銘じるべきだと思います」(同・軍事ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部

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