元ストーカーの高校教師が恋したのは、自分の名前すら書けないホストだった… 「誰からも祝福されない恋」の行く末は
やや問題のある、または問題を抱えている主人公が、追い込まれていくドラマは好きだ。同じ職場の男にフラれ、未練のあまり無意識のうちにストーカーと化し、警察に通報されて、自主退職を促され無職に。自暴自棄で海に飛び込んだが死にきれず、引きこもった経験がある、なかなかの逸材。絶望を経て高校教師になったものの、生徒からなめられるヒロイン・小川愛実を演じるのが木村文乃。真面目で堅物で抑制的で融通が利かなさそうだが、一途さと狂気は紙一重と匂わせる役が実にしっくり。終盤に向かって最も化けそうな「愛の、がっこう。」の話だ。誰からも祝福されない恋、なぜなら相手がホストだから。
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手足も指もえらく長いラウールが、若きホスト・カヲルを演じる。若さと外見だけでイキっているお馬鹿な枕ホストと思いきや、こっちはこっちでしんどい事情がある。カヲルは母親の育児放棄+学習障害で、小学校もほとんど行っていない。漢字の読み書きは壊滅的、自分の名前すら書けない。母(りょう)は再婚して、異父弟を出産。再婚相手(木原勝利)に強いられて、金の無心に来ることも。それでもカヲルは見放すこともできず。ふとした瞬間に見せる寂しげな表情には、不遇への諦観と哀しみが漂う。軽口をたたいてふざけがちな背景には、幼少期からの絶望がある。無垢で無知な子供のまま、水商売の世界へ入るしかなかったカヲルをラウールが好演。
恋愛モノだが、恋愛に発展する前の「思慕と敬意」、二人が人として引かれ合っていく様を丁寧に描写。この二人が幸せな結末を迎えるとは到底思えないのは、障害というか壁となる人間がわんさかいるからだ。
愛実の父(酒向 芳)は大手企業の役員で典型的モラハラ男。常に母(筒井真理子)を下に見て馬鹿にしている。父の横暴さに耐えているが、母は決して反論しない。つまり愛実は、裕福だが選民意識が高くて偏見と差別に満ちた家庭に育ったわけだ。
父が押し付けてきた見合いの相手は銀行勤務の川原洋二(中島 歩)。彼が愛実との結婚を急ぐのは既成事実が欲しいだけで、人妻(野波麻帆)とずぶずぶ不倫中。悪人ではないが、ちょうどいいあんばいのクズを中島がコミカルに好演(二の線を手放すとがぜん魅力が増すよね)。
親友・百々子(田中みな実)は愛実の昔の男を寝取った割に保護者気取りでお節介。同僚教師・佐倉栄太(味方良介)も、愛実の猪突猛進っぷりを心配。ま、当然だが、女を食い物にするホストとの恋を応援する人なんて、いないわけだよ。
カヲルは太客の明菜(吉瀬美智子)に枕を要求されて下僕扱い、賢い大学生ホストのつばさ(荒井啓志)には敵視され、店では馬鹿にされ続けている。闇と罪が深そうな社長(沢村一樹)に悪用されそうな気配もある。
カヲルが気になってタガが外れ始めた愛実と、愛実を巻き込まないよう遠ざけ始めたカヲル。二人の愛が強くなるほど、それを許さない包囲網も増強。井上由美子脚本独特の「ドライブ感あふれる悲恋」、盛り上がるのはこの後すぐ!








