「高齢化だけの問題ではない」公明党の参院選大敗にみる「宗教票」“終わりの始まり”
先の参院選では“過去最低”の結果に終わった公明党。つい20年前までは900万近くまであった比例代表の獲得票数も、ついに「500万割れ」が間近に迫る。果たしてこれは、かねて指摘される「高齢化」だけの問題なのか。専門誌「宗教問題」編集長の小川寛大氏は、公明党のみならず、立正佼成会系候補の結果なども踏まえ、「宗教票自体の“終わりの始まり”」を指摘する。
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参院選の公示直後から、その兆候は表れていた。
都内各地では、公示日に公明党の選挙ポスターが昼過ぎまで貼られないままの掲示板がいくつも見受けられ、また「常勝関西」と自称するほど選挙に強かったはずの大阪でさえも、公明党の街頭演説に集まる人は他党に比べかなり少ない――。
もちろん地区や演説日によっても違いはあるだろう。また今夏の猛烈な暑さを考えれば、高齢者が多い熱心な公明党支持層(創価学会員)の腰は重くなって当然だ。
それでも、毎年同党の動向を追ってきた身からすると、例年とは異なる“何か”を感じざるを得なかったのだ。
こうして迎えた選挙の結果は、公明党にとって惨憺たるものだった。大阪での議席は死守したものの、神奈川をはじめとした3選挙区で落選、さらに比例代表の得票数も昨秋の衆院選から大きく減らし約520万票と、過去最低の結果に終わった。
「活動を辞める理由を探している」
この背景にある「創価学会員の高齢化」は指摘されて久しいが、その流れは加速するばかりだ。学会のカリスマ、故・池田大作名誉会長と直接触れ合った記憶を持つ、熱心な信者の大半が高齢者になり、肉体的にも精神的にも限界を迎えつつある。「旦那が亡くなったので」「老人ホームに入るから」などと、彼らはもはや「創価学会の活動を辞める理由」を探している状態なのだ。
その意味で、2023年に池田名誉会長が亡くなったことは、きっかけの一つとなったといえよう。以前より「池田氏不在を前提にした体制」を着実に築いてきた学会組織であるから、池田氏の死去が組織運営にそれほど大きな影響を与えることがなかったのはたしかだ。だが一方で、やはり精神的支柱が失われたという意味での影響は間違いなくあった。「池田先生が亡くなったから」と、活動の最前線から身を引いた学会員も少なくなかった。
学会員の選挙活動に対するモチベーションが損なわれるような事態も出てきている。
昨年の衆院選では、埼玉14区の三ツ林裕巳氏や兵庫9区の西村康稔氏等、自民党の非公認となった“裏金議員”に対して、公明党が支援にまわった地域が一部であった。お上からの指示に従って学会員が必死に「F取り」(非学会員に公明党への投票を呼び掛ける活動)をしていると、「公明党は裏金議員を応援しているのか」との言葉を投げかけられ反論もできず、これまで公明党に投票してくれていた友人でさえ離れてしまったこともあったという。
「なぜ公認されてない自民党議員を公明党が支援するのか。現場の選挙活動にも大きな弊害が出たし、私たちに対する周囲の不信感も強まるばかりでした。そんな実態があるのに、上層部は『選挙はそういうものだ』と現場の声には聞く耳を持たない。組織と現場の不和を感じざるを得ませんでした」(さるベテラン学会員)
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