酷暑の万博を訪れた「関西出身の還暦コンビ」が入場前から“熱中症”の危機…人気パビリオンの大行列を目にして「ホンマに死んでまうかもしれんで」
大阪・関西万博へ行ってきた。仕事柄、様々なニュースやネット上の投稿をチェックしているが、万博に関しては賞賛にしろ批判にしろ、さらっと上っ面を撫でるような情報しかなく、どうにも興味を掻き立てられなかった。【井上トシユキ/ITジャーナリスト】(全3回の第1回)
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【写真10枚】思わず惹きつけられる魅力たっぷり… 万博会場を彩る「世界の美女」たち
「娘婿がスポンサーの一社に勤めていて、格安でチケットが入るから」という地元の友人の誘いに応じたのは、さらっとした情報ばかりの裏を知りたいとの助平心が首をもたげたからだ。
7月1日、午前10時入場の列に並ぶため地下鉄の夢洲駅を出た。コンコース両側の壁面と柱にはデジタルサイネージが設置され、派手な映像が流れている。駅から万博会場の東ゲートへと至る最後の階段エリアは白色ベースで明るく、段を跨いで描かれたミャクミャクが楽しそうに笑っているイラストや「さあ、未来社会へ」との惹句がワクワク感を掻き立てる。
東京のベイエリアでよく行われるビジネスショーやモーターショーのような、大規模イベントに独特な、人の心を高揚させる演出だ。とはいえ、段差を利用したペイントによる告知は、私が大学生だった80年代のバブル期から用いられてきた手法でもある。つまり手垢がついているということに他ならない。そう思い直すと、「未来社会」がどこに示されているのか、最初の違和感を覚えた。
熱中症の危険
階段を上ると100メートルほど先に人だかりが見えた。ところどころに鉄柵が設けられており、その間に並んで待つようだ。ゲートの入口が見えないほど行列は長く、列の脇では日傘を貸し出しているボランティアのスタッフがいた。申し訳程度のパラソルがあり、その下で立ちっぱなしだ。熱心に声かけをしているが、熱中症という点では列に並ぶ私たちと同程度の危険があるのではないかと心配になってしまう。
日傘は行列用で、入場するとすぐに返却しなければならないという。日傘が必要なほど待たされるのかと思ったら、背中を汗が流れ落ちた。スマートフォンを取り出すと気温は30度。だが日差しを避ける構造物が何もない。湾岸部特有の湿気もあり、体感では2、3度は暑く感じる。
暑さ対策は皆無で、ミストの発生装置すらない。行列はノロノロと進む。これが未来社会の夏なのかと思う。やっとゲートに着き、大型のポリバケツに日傘を返す。出鱈目に放り込まれた日傘の数々。小学生の時に練馬の自宅近くで見た屑鉄置き場を思い出した。あれは昭和40年代のことだ。
ゲートチェックではX線手荷物検査装置と金属探知機が並び、保安員が忙しく対応している。空港の保安検査場と全く同じで、QRコードを使ったチェックインも飛行機に乗る時と変わらない。完全無人の全自動入場システムや世界各国の言葉を話すロボット保安員といった未来的な光景を想像していたので拍子抜けしてしまった。
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