「ミヤネ屋」が反転攻勢に転じたワケ 「ゴゴスマ」優位は変わらずも…“宮根隠し”が奏功か

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「ゴゴスマ」は我が道

 高岡氏の発言はSNSで批難されることが少なくなかった。たとえば2024年5月20日放送でのこと。男系に拘るか女系を容認するかで市民の意見が割れている皇位継承問題について、こう解説した。

「国民投票をという方もいますが、皆さんが同じだけの知識を持って臨まないと。たとえば男系を主張されている方々からすると、『にわかの知識』で言うのはやめてくれよという話にも当然なる」

 女系天皇容認派は知識不足と言わんばかりの発言だった。皇室問題研究の権威の1人は「継承問題は一般国民による一般的な感覚による選択で十分」と反発した。

 一方、「ゴゴスマ」の石井氏は制作会社・CMサイトが調べた2024年の「アナウンサー人気ランキング」で5位だった。地方局を中心に活動するアナでは最上位である。ほかの調査でも上位にランクインしている。

 人気ランキング調査に寄せられた声を見ると、その魅力は「必死さや真面目さが伝わってくる」「今は一番親しみがある」。人気者になっても庶民感覚を失わないところが共感を生んでいるようだ。

 石井氏は以前から信条を「誰も傷つけないこと」と言っている。確かに放送中に声を荒らげることはない。誰かを糾弾したり、正義の味方を気取ったりすることもしない。2000年代までのMCとは大きく違う。

 旧来のMCは「自分が主役」という意識も強かったが、石井氏はコメンテーターにも気を遣っているのが分かる。8月8日放送にはコメンテーター5人が出演し、うち1人は政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏(67)だった。しかし、この日は政治を扱わなかった。

 このため、鈴木氏は1時間近く沈黙。この人も出しゃばるタイプではない。すると石井氏はお盆の天気や交通情報を伝えていた際、「鈴木さん、お盆はどうされるんですか?」と水を向けた。

「お墓参りです」と答えた鈴木氏。以後、鈴木氏は高校野球・広陵高(広島)の暴力問題など得意分野以外の話題にも積極的に意見を口にした。石井氏による人を話しやすくするテクニックも番組の隠れた見どころである。

 この日はスポーツ心理学者の田中ウルヴェ京氏(58)もコメンテーターだった。シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)の元五輪メダリストである。田中氏は広陵高の問題について「選手間の暴力の問題は世界中にある」としながら、今回の対処の不備を細かく指摘した。これが、コメンテーターが5人も出ている理由の1つなのだろう。知識の幅が広い。

 午後の情報番組の覇者争いは続く。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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