“金持ち以外は郊外へ”は危ない…東京に迫る「ジェントリフィケーション」の影 ひと足早く欧米で起きていたこと
社会の分断を招く「ジェントリフィケーション」
住宅価格の高騰は、かつては多様な所得層が共存していた地域の風景を一変させつつある。
「富裕層向けの高級マンションや商業施設が次々と建設され、中低所得層は郊外への居住を余儀なくされています。長年親しまれてきた商店街や地域コミュニティは姿を消し、社会的多様性が失われていく。この現象は『ジェントリフィケーション』と呼ばれ、欧米諸都市では長年にわたり社会問題として議論されてきました」(西岡氏)
「ジェントリフィケーション」は、日本語では「高級化」「富裕化」「階級浄化」などと訳される。
「ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、パリといった大都市では、1990年代からIT・金融産業が台頭し、2010年代にはデジタル化の進展で経済のサービス化が加速しました。これに都心部の再開発やグローバルマネーの流入が加わって、住宅価格が押し上げられ、富裕層や外国人投資家が住居を買い占める一方、それ以外の層が郊外へ追いやられました」(同)
多くの政党が外国人による不動産取得規制を公約に掲げた参院選
こうした社会の分断は単なる経済問題にとどまらず、階層間の対立に発展。抗議デモが多発するなど社会不安を招き、さらにはポピュリズム勢力が台頭する温床になったとも指摘されている。
「これまで比較的政治情勢が安定してきた東京も、欧米が辿ってきたこうした道筋に足を踏み入れつつあります」(西岡氏)
奇しくも先の参院選では、多くの政党が外国人による不動産取得規制を公約に掲げ、議論が盛り上がったが、西岡氏は
「住宅市場の分断が進めば、さらに社会的な亀裂が深まる可能性は否定できません」
と警鐘を鳴らしている。
〈【「住宅価格高騰」が都市を壊す…東京に迫る「ジェントリフィケーション」の影 欧米の“社会分断”から学ぶべき教訓とは】では、誰もが住みやすい多様な都市であり続けるために東京が学ぶべき欧米の先行事例や、外国人による不動産取得規制が内包するリスクなど、より詳しい西岡氏の解説をお届けする〉
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